■国の対応はまるで専制政治
八重山民謡に「やぐじゃーま節」がある。
「やぐじゃーま」とはカニの名称で、その句一節に「うふつみゆ、かなちみゆ ぷちゅる ぱたら かかれぬ しんさ」(大爪を鉄のように硬い爪をぷちぷちと折られるこの辛さよ)がある。この歌は王府時代、専制政治のなかで、農民たちがカニを擬人化してやり場のない怒りの境遇を歌ったものといわれる。
辺野古新基地建設に対する日本政府の対応をみていると、この歌のように沖縄の訴えるすべを全てもぎ取ってしまう専制国家に見えてくる。
先月23日、翁長知事が、岩礁破砕を理由に辺野古の新基地建設作業の一時停止を防衛局に指示した。ところがその指示効力を30日、林芳正農水相は一時的に止めると30日発表した。
その理由として普天間飛行場の代替施設建設が大幅に遅れ、普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音による損害。日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害を挙げた。
■閣僚はいるが政治家がいない
翁長知事は沖縄防衛局の不服申し立てを同じ政府組織の農水省が審査する対応に「公平、公正に行われたか理解できず残念。今後の対応は専門家と相談の上対応したい」と述べた。翁長知事の停止指示効力を林農水相が無効にするであろうことは予想されたことだ。
安倍首相の訪米を前に、効力が有効となれば日米関係の悪化が懸念される。そのうえ内閣の意思不一致にもなりかねないという判断もあっただろう。菅官房長官は「水産資源保護法を所管している農林水産大臣が判断することはある意味当然のこと。問題ない」と述べ正当性を主張している。
しかし、農水相の行政不服審査法は国民の権利救済が目的であり、国が国民と同じ立場の事業者を主張することに、法律専門家からも疑問の声が挙がっている。このような事態を招いたのは政治が全く機能していないからだ。閣僚はいるが政治家はいないといってよい。
1日、外務省は仲井真前知事の知事公室長を務め、基地問題を担当した又吉進氏を参与に任命した。だれもが反対派への対抗かというのも無理もない。又吉氏には県民が知事、衆議院選挙で示した辺野古新基地反対に水を差す国の旗振り役を演じないことを願う。
■やぐじゃーまの怒り爆発?
ところで政府は2日、山口俊一沖縄北方相が翁長知事と会談し、これまで、知事との会談を避けていた管官房長官が宜野湾市のキャンプ瑞慶覧の米軍基跡返還で来島するのを機に会談をするという。閣僚が知事と会談するのは、知事指示効力停止に対する県民の反発や、強硬姿勢に対する県民世論への配慮からであろう。
政府が工事をさらに強行すれば、知事や県民の反発はますます激しくなるだろう。
菅官房長官には、ヤグジャーマカニの怒りが爆発し、コザ暴動のようにならないような、沖縄への配慮と実のある会談を願っている。