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中山市長の施政方針を読む

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■おざなりの文化と自然保護行政

 中山石垣市長の2015年度施政方針を読むと、観光ということばだけが躍っている。しかし、観光業を成立させている文化や自然環境に対する施策がほとんどみられない。文化観光について本市の観光価値を三線の調律を意味する「ツンダミ」と定義し、文化と観光を複合した規模感のある野外イベント「ツンダミアイランドフェスティバル」をするとか。何のことはない、観光客相手の歌と踊りでしかない。1700万円が夜空に消えた2月の冬の花火が市民に何をもたらしたか。市民からは不満の声も少なくない。

 「文化財につきましては、本市の豊かな自然と風土に育まれたものであることから、保護と継承を図るとともに、文化財愛護思想の高揚に努めてまいります」と述べ、平久保半島にかつて多良間島の人たちが稲作をしていたという多良間田の資料収集を行うというだけである。文化財ウンヌンに関しては旧態依然であり、多良間田に関する件も以前に議論された経緯があり、新鮮味に欠ける。それよりも新博物館、水族館建設はどうなったか。莫大(ばくだい)な費用がかかることはいうまでもなく実現は可能か。

■狭まる希少生物の生息数

 県立図書館八重山分館廃止の際、市長が市民と約束した、八重山図書館協議会(仮称)も今もって実現していない。市民との話し合いも中断し、石垣朝子教育長さえもこの問題をほとんど把握していない状態だ。市民との約束から4年間、決断のできない市長は「すぐやる課」設置時の初心に帰るべきだ。

 市長が言うように文化財は八重山の豊かな自然と風土が育んできた。現在、石垣島は豊かな自然環境であろうか。山の奥まで家屋が建ち、山中まで車両が走り回り、環境が変化し自然が減少しているのは誰の目にも分かることだ。天然記念物のカンムリワシも環境の変化により減少、カラスバトはもう幻の鳥である。イシガキニイニイの生息地も狭められている。動物にとって石垣島は棲みにくい島になりつつある。

■自然失うと文化失う

 もうすぐ、県指定天然記念物のアサヒナキマダラセセリの産卵期がやってくる。やっかいなことは、それに合わせて不法採取する者が後をたたないことだ。市教委文化財課が看板を立てパトロールも実施してきた。それでも忠告を無視し平然と採集する者もいる。県文化財保護条例で検挙されるという事態にまで発展した。文化財思想からいえば残念なことである。文化財は国民の財産として国民一人一人が大切にしなければならないもので密猟など許されない。

 外来生物もまた、島の生態系を脅かしている。ジャンボタニシ、クジャク、キジ、カピバラ、イグアナなどの被害は大きい。環境省はヤエヤマイシガメが減少していると輸出禁止を発表した。中国でペットとして人気があるという。ナマコも中国料理の材料として輸出され、島周辺からとり尽くされた感がある。

 自然を失うということは文化(精神)を失うということだ。文化(精神)が大切にされてこそ観光産業も永続性があるというものだ。市長の施政方針には文化への思いがみられないのは遺憾だ。


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