陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備に向けた基地建設工事で与那国町には昨年4月から島外の工事関係者が多数来島しているが、当初期待された飲食や宿泊面での経済効果は少なく、町内の商店や飲食業者からは「思ったよりも利用してもらえていない」「期待はずれでがっかり」と落胆の声が上がっている。その背景には、宿泊所の提供や大量の食材の確保など、町側の受け入れ態勢の不備が指摘されているほか、工事関係者とのコミュニケーション不足なども課題となっている。
同町商工会の郫原孫吉会長によると当初は、工事関係者が町内の宿泊施設を利用し飲食店で食事をしてもらう予定だった。しかし、観光シーズンを前に宿泊関係者から「観光客から部屋の予約が取れない」との苦情が増え、工事関係者の宿泊を断る宿も出てきたという。
このため、約30人の作業員や町内に常駐する県外の大手工事業者は、宿泊場所を確保できないことから、町内の廃業したホテルを借り上げ、昨年7月から宿舎として使用。町内から食事を準備する従業員を雇って食事を賄い、外食はほとんどないという。
工事関係者によると、30人前後の食事を準備するため、食材は石垣市のスーパーから4日分ほどをまとめて購入し、島内での調達は限られてくるようだ。
また、早朝の仕事に影響が出ないよう全体的に飲酒を控える傾向があるようだが「仕事が休みになる週末は集落の飲食店で酒を飲んでいる人もいる」という。
町商工会によると、1月時点で自衛隊関連の工事関係者は60〜80人程度だが、3〜5月にかけ用地造成が終わり、建物の工事が始まると400〜500人規模の関係者が来島することが予想されており、郫原会長は「宿泊場所だけでなく、食材を確保できる環境、町内の店を利用してもらえるような受け皿づくりをしっかり整えなければならない」と今後の課題について話していた。