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副市長、教育長人事に思う

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■与党反対の副市長をなぜ強行

 石垣市議会では与党内の調整不足ですったもんだした副市長人事が決着し、漢那前副市長の再登板、新教育長には本命とみられていた玉津前教育長に代わり、これまで委員長だった石垣朝子氏が就任した。

 とはいえ副市長人事で中山市長はなぜ議会で一度は否決され、さらに反対の一部与党議員との3度の調整不足のまま強行したのか。市長は再任理由として公共事業における実務手腕の高さをあげた。だが、県土木部長時代の識名トンネル問題や火葬場建設問題などにみられるように、漢那氏は市長を支えるどころか与党との調整も力不足で、むしろ足を引っ張っていたとしか思えない。

 机上の論理ではなく、市民との触れ合いや市民の意見にしっかりと耳を傾ける姿勢で公務にまい進してほしい。前回否決に回った3議員はなぜ、今回は賛成に回ったのか。節操のない議員として誹(そし)りを受ける前に市民への説明責任を果たすべきだ。

 石垣新教育長は就任あいさつで「学力向上」に取り組むことを強調し、「教育長としてのリーダーシップを発揮したい」と抱負を述べている。学力向上は当然なことで、女性の立場から児童生徒へのきめこまかな指導を望みたい。また、心に悩みを抱える教員が増えていることにも配慮すべきだ。

■改正法にらんだ人事との臆測も

 石垣氏の教育長就任に対しては、今年6月に可決され、来年4月に施行される改正「地方教育行政法」による玉津前教育長の再登板までのつなぎではないかとの臆測がもっぱらである。

 これはうがった見方として新教育長には不快かも知れないが、副市長人事にみられるように、市長が前教育長の再登板へ固執している節が見え隠れしているからだ。改正地方教育行政法は地方自治体の首長に教育行政に関する権限が与えられ、教育行政に対する介入等によって教育委員会が形骸化するとの懸念が教育関係者や法律家から指摘されている。

 旧法では、教育長は教育委員の中から選任され、教育委員会の基本方針に従い、教育事務を管轄する職務であった。改正法では首長が議会の同意を得て教育長を任命することになった。さらに教育長は教育委員会の会務を総理し教育委員会を代表することになり、教育長権限が強化される。

■改正法で教育の中立性に懸念も

 改正法は「教育の政治的中立性」をうたい、議会の同意を得てとはいえ、首長が教育長を任命するとなると市長の政治的姿勢や思惑が教育に反映され、教育の中立性が脅かされることが懸念される。

 また、首長は「教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱」を策定することになっている。策定する場合、教育行政に混乱が生じないよう「総合教育会議」が設置され、首長、教育委員会が十分に協議、調整を尽くすことが肝要であるとしている。

 改正法案審議の過程で、当時の下村文部大臣は「首長と意見を異にする教育長らには辞職を勧告することもできる」と答弁している。八重山教科書採択問題で文科省や政治家の介入があったことは明らかである。そのような事態が改正法によって正当化されかねず、戦後教育最大の危機である。

 石垣教育長が4年の任期を全うするか、それとも半ばで辞任し、改正法の下、前教育長の再登板となるのか。中山市長や石垣教育長の今後の動向が注目されるが、首長や政治の思惑によって教育長人事や教育の中立が左右されてはならない。


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