■スピーディーな対応を評価
県教育庁は、先日、中学校の部活動に関して教員の負担軽減を図るよう求めた提言を各教育事務所に送付した。学校行事や家庭訪問についても同様に見直しを求めている。だが、教員の負担軽減の立場からではなく、生徒に学習とのバランスの取れた生活を送らせる—の観点の方が本筋ではないか。結果としてそうなると踏んでのことだろうが。
県教育庁は先月、小学5年と中学2年、その保護者を対象にした「児童生徒の生活実態調査」を発表した。今回の通知は、それを踏まえての「生活改善」提言ということだろう。
このことに関してこれまで県校長研究大会や都市教育長会議などでも課題に上がるものの全県的な動きがなかった。本県教育を統べる教育庁の指導性とスピード感を高く評価したい。要はこの提言を各学校がどう受け止め定着させるかということだ。今後は各教委や校長の指導力が問われることになる。併せて父母、地域との一枚岩が求められる。
■過剰な部活動
中学校の平日の放課後は、大方の生徒が部活動に精を出している。始業前の早朝練習も見られる。土・日、祝祭日も練習に明け暮れる。明らかに過剰である。予習・復習、読書、生徒会活動や家事手伝い等との均衡を欠いている—と言わざるを得ない。その過剰さから生活のリズムが整わない生徒の姿が浮かぶ。そのとおりで中学生の4割が睡眠不足、主食のみの朝食が3割、車登校が3割を超える—との調査結果が出ている。そのことは授業に影響を与えている—と考えるのが普通だろう。
提言は、平日の練習時間は2時間以内とし、午後6時半までの下校を促している。また、土日のいずれかや「家庭の日」(毎月第3日曜)の休養日、対外試合数の上限などを設けることも呼びかけている。
これらの提言が順守されれば、指導に当たる教員の負担も軽減され、その時間的余裕を生徒理解や他に充てたりすることができる。本県児童生徒の低学力は、生徒のみにその責めを求めてはいけない。指導する方にもあるということを自覚すべきだ。日々の授業における深い教材解釈・研究や緻密な習熟指導計画で生徒に対峙(たいじ)したい。提言のねらいはそこにあると考える。日々の授業の充実なくして学力向上はない—を新たに確認したい。
だが、提言に強制力はなく、市町村教委に判断を委ねている。腰を引き過ぎではないか。教委は学校と連携し主導的立場で当たりたい。
■キャリア教育の推進
子どもは夢を描く。得てして甘美すぎる夢をだ。もっと年齢にあった夢、ジャンプすれば手に届くような夢を描がかせたい。すなわちもっと現実的な職業選択の夢を育てたい。そのためには、それに対応できる学力や興味、関心を育て、満たさなくてはいけない。
将来「自分らしく力を発揮し、活躍できる場」が得られる人材に育ってほしい。学習に力点を置いた学校生活を送らせたい。現状は、部活動偏重に映ってしようがない。
年の瀬。学校修了後の己の人生を展望させるにふさわしい季だ。望には「遠くを見わたす」、展には「未来をひらく」の意がある。