■いばらの道
先月16日の県知事選で3期目を目指した仲井真弘多氏(75)をかつてない10万票という大差で破り初当選した翁長雄志氏(64)が、きょう10日知事に就任。最後まで「裏切り者」と批判されて退任した前知事のあとを受けて県都那覇市から舞台を沖縄全体に広げた翁長県政の4年間がスタートする。
知事選で翁長知事は「イデオロギーよりアイデンティティー。大いなるソフトパワーで沖縄を拓く」として、名護市辺野古の新基地建設反対など三つのノーと、こども環境日本一の実現など10のイエスを公約に掲げたが、そのスローガンである「誇りある豊かさ」実現に手腕が問われることになる。保革を超えたその手腕に期待したい。
ただ最大の争点だった米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設阻止には、自身が当選証書授与式で語っていたように「いばらの道」が待ち受けている。 県民の大多数の民意を得たからといってそれで問題が一気に解決したわけでない。しかも既に埋め立て工事は事実上始まっている。辺野古移設を推進する日米両政府とどう向き合い、これを阻止するか。その上で普天間飛行場の危険性除去を早期にどう実現するか、まさにいばらの道といえるだろう。
しかし県民の意思は圧倒的大差で明確に示されたのだから、堂々と日米両政府と渡り合ってもらいたい。
■誇りある豊かさ
沖縄はこの基地問題を筆頭に、抱える課題は多い。そこで翁長氏は基本政策として経済発展、生活充実、平和創造の三つのプランを掲げ、実施政策に▽人材(財)の育成・自立経済発展資源の創出▽沖縄らしい観光リゾート地の形成▽産業の振興と雇用の創出・安定▽子育て・高齢者施策の推進|など15項目を挙げた。
その中に離島振興策も「離島力の向上」として並べられた。
翁長氏は、沖縄振興予算の大半が県外企業に還流するザル経済を指摘。振興予算が地元企業に効果をもたらす経済発展プランの展開を強調する。確かに雇用の創出と正規雇用の拡大、賃上げによる所得向上など「雇用の質」の改善は県政の最重要課題だ。
県経済はここ数年、八重山もそうだが観光にけん引されて好調に推移。この結果雇用状況も改善の傾向にある。しかしその実態は非正規雇用が2人に1人の約44%と全国ワーストにあり、雇用形態は極めて不安定だ。
それが全国最下位の県民所得につながり、ひとり親が多い沖縄の「子どもの貧困」「貧困の連鎖」は恐らく全国最悪だろう。その対策は急務だ。
■離島めぐりで実情把握を
翁長氏が掲げた「離島力の向上」では各種振興策が示された。ひところに比べて確かに離島にもようやく光が当たるようになった。しかしまだまだ雇用創出の問題や各種輸送コストの低減、県大会の派遣費など離島には都市部にない良さも多いが、ハンディや苦悩はさらに多い。それだけに新知事はまず離島めぐりで直接実情把握し、島の実態に沿った対策を進めるべきだ。
幸い副知事には宮古島出身で石垣育ちの安慶田光男那覇市議会議長(66)が就任の見通しだ。ぜひ離島の大きな力になっていただきたい。