全国漁港漁場協会主催の第13回海・川の名人選考で、伊原間の平良正一さんが選ばれた。漁業歴約70年で、今年の名人は全国で19人という▼漁業従事者の中には、優れた能力を持つ人がいる。長年の経験で天気を正確に当てたり、マングローブに止まるサギを見て、大漁かどうかを予測する。気圧の関係と言うが、かなりの的中率だ▼むかし、白保で「タコ採り名人」の漁に同行したことがある。船の上から3㍍ほどの長いモリでタコを突き、器用に引き上げる。ものすごい熟練の技だった。テレビで見るウニやザザエのように動かぬものでない▼感心したのはタコを採った後の作業だ。すみかの穴を周辺にある石を寄せてふさぐ。理由を聞けば、「穴をそのままにすると、タコはもう住み着かない」らしい▼名人は「次のタコを住み着かせるため、穴をふさぐ。そうすれば長年の漁場になる。タコを探して難儀しなくていい」と笑った。一見単純な作業だが、ものすごい知恵である。名人と呼ばれるわけが分かった▼漁業は、私たちの暮らしに欠かせない。それもさまざまな名人がいて、工夫に工夫を重ねているから魚介類を提供できる。しかし後継者がなかなか育たないのも現状だ。ぜひ漁協ほかの関係機関は、数多く名人を認定し、漁業者に自信と誇りを持たせるように取り組んでほしい。(黒島安隆)
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