■琉大医学部「離島・北部枠」
教育に関わるもので、近年これほどの朗報があっただろうか。琉球大学医学部に「離島・北部枠」を設け合格者を出すというものだ。離島・北部の高校で、大学進学をめざす普通高校に限ればおのずと限定される。いよいよ該当する高校、中でも郷土の進学校県立八重山高校の実力と使命が試されよう。教育における競争論が有効打を放つとすれば、こんな時ではないだろうか。自分の人生と地域の期待がかかる。競い合い成就してほしい。
大学入試の校区は当然のことながら全国区。琉球大学医学部は2009年度の入学者選抜から特別に沖縄県「地域枠」を導入し、本県高校卒業生から合格者を出してきた。これは離島などの医師不足解消を目指す国の緊急医師確保対策に伴ってのものである。定員外であるだけに英断だ。そのことに加えて15年度入学から「地域枠」の中に新たに「離島・北部枠」(定員3人)を設定する。対象になる高校は県内離島3島(石垣市、宮古島市、久米島町)、本島北部5市町村(大宜味村、今帰仁村、本部町、名護市、宜野座村)に所在する高校。琉球大学によれば、地域枠の募集定員総数はこれまでより5人増員して17人になるという。
生徒はこの入試環境の変化をわがものにし、地域医療を改善する有為な人材になってほしい。使命感を持ってほしい。高校をはじめ、小中学校の教育関係者は、これを千載一遇の好機ととらえ励まねばなるまい。
■近づく県立八重山病院新築
この朗報に応えるかのように、県立八重山病院が旧石垣空港跡地に新築される。計画によると15年度に着工、17年度内の開院を目指す|としている。
新病院は外国人旅行者の増加に伴って懸念される感染症への対応や八重山の伝統文化を生かした治癒環境構築への配慮もされるようだ。多様化する医学・医療に対応するため診療科が増加している。八重山は亜熱帯という地域的特性や東南アジア諸国との交流という文化的特性もある。これを生かすのは人材だ。
異動期になると医師確保に奔走する姿が痛々しく映る。自分たちの島を治めるのは自分たちでなければならない。他に頼るわけにはいかない。この気概を持って果敢に挑戦する若者であってほしい。そして、この好機に今こそ郡民一丸となって合格者を出したい。
■平成の「国費生」になろう
戦後、沖縄には文部省(当時)による国費制度があり、本土の国立大学で多くの若者が学んだ。彼らはやがて郷土の復興に尽くすことになる。今回の琉大医学部「離島・北部枠」
は、これの「県費生」版と見ていい。県から授業料、生活費が6年間貸し付けられる。卒業後は研修医として5年、医療機関に4年の計9年間の従事義務がある。このことで地域医療に貢献する仕組みだ。それがかなったとき貸し付けは免除されるという。
医師は、高い学術能力と豊かな人間性、そして生命科学への優れた研究を培ってはじめて得られる職業である。出でよ若者。郷土の医療を担うこの誇り高きことを生業(なりわい)とせよ。