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土に親しみ心を耕せ

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 ■その道一筋をたたえたい

 今月7日までは2014年度「第56回教育・文化週間」だった。

 「文化の日を中心として教育・文化に関する諸行事を全国的に実施することにより、教育・文化に関する国民理解と関心を深め、その充実振興を図るとともに教育改革への一層の協力を得ること」を目的としている。

 今年の県功労者には長年、防災活動やアンガマ面を制作してきた田場由盛さん、大川出身の渡久山長輝さんが一般篤行部門で表彰された。県文化功労者に八重山から該当者がいないのは残念である。「詩の国、歌の島」と言われ、芸能を始め文化活動も盛んでありながら県の文化振興に貢献した人がいないというのは不思議である。

 本紙主催の八重山毎日文化賞・正賞には南風野喜作さんと黒島精耕さん、特別賞に内盛スミさんが選ばれた。

 南風野さんは八重山古典民謡の師範として後進の指導、普及発展に尽力した功績が認められた。黒島さんは出身地、小浜島の歴史や芸能文化の研究を長年続け、小浜島に伝わる「ダートゥダー」をライフワークとし、結願祭での復活や著書「ダートゥダー探訪の旅〜小浜民俗歌舞の源流をたどる〜」が高く評価された。

 内盛さんは竹富島でミンサー織りや藍染め、草木染、芭蕉紡ぎなど長年にわたり工芸活動と振興、育成に人生の大半を費やしてきたことが認められた。

 表彰を受けるのはその道一筋に打ち込んできた人たちばかりである。22日の八重山毎日文化賞贈呈式と祝賀会では長年の労苦をたたえたい。

  ■農業に由来する八重山文化

 文化は英語でいうとカルチャーである。カルチャーは「耕す」を意味し、語源はラテン語に由来する。土地を耕すことが、やがて心を耕す意味にも用いられ、文化をも意味するようになった。

 八重山の文化が農業に由来することはいうまでもないだろう。かって農作業はユイ(共同作業)で行われ、地縁、血縁の絆が強固であった。しかし農業の近代化が進み、ユイの習慣はなくなり、農業中心の地域社会は崩壊した。家族も核家族化し、コンピューターの普及によって、世代間の意志の疎通も難しくなっている。

 農業中心から消費社会への移行は身体の変化をもたらし、八重山芸能にも影響している。稲刈りや農作業のように腰を落とすことが衰退し、新川のムラプーリィ(豊年祭)のアヒャーマ綱などの女性のガーリが、腰の据わらぬ軽薄な踊りに見えるのも農耕とは無縁だからではないだろうか。

 ■同人誌の復活に期待

 心を耕すといえば、文学や詩など同人誌が全くないのも残念である。気を吐いていた『邂逅』が2012年に終刊して以降、同人誌が誕生しないのは精神文化の衰退だ。仲間同士、作品を発表し批評し合ってこそ精神の高まりもあるだろう。

 八重山では詩や文学をする人が少ないだけに、同人誌は必要ではないか。八重山美術会も近年、活動を休止したままだ。何が活動を休止させているのか。会員はその原因を話し合い再開させてほしいものだ。八重山文化の根源をなすためにも土に親しみ、心も耕してほしい。


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