ピィンガン(彼岸)を過ぎても昼間はまだクーラーが必要だが、朝夕はいくらかしのぎやすくなり秋の気配を感じられるようになった▼夜自転車で走っていると、どこからともなくヤコウボク(夜香木)が香ってきた。高校生のころ夜遊びして帰る道々、あちらこちらの庭先から香る花の名前が分からず友人と「ユーマーレー(夜回り)の香り」と呼んでいたのを思い出す。最近は住環境の変化で少なくなったなと思う▼そういえば本紙「週刊オーライ」に隔週掲載の「八重山の花調べ」を執筆している大竹蓉子さんが「八重山の海岸で普通に見ることができた、ありふれた花々がいつの間にか消えてしまっている」と嘆いてらした▼八重山大好きの大竹さんは、これまで30年余り、東京から石垣に通い続け、島々の山野や海浜などを巡って絶滅危惧の草木や花を観察し続けている▼ノボタンやサンタンカなどもめっきり少なくなり真栄里海岸ではハマアズキが絶滅したという。以前はグンバイヒルガオの群落もあり9~10月ごろ、紅紫色の花が砂浜を覆うように咲き、競うばかりの自然があったと振り返る▼島の原風景がここ数年、急激に消えていっているような気がするし開発による様変わりを嘆かずにいられない。大竹さんと同様、観光立市の自然の行方を案じるばかり。(辻本順子)
↧