■分館廃止から2年余
27日から今年の読書週間が始まる。本年度のテーマは「めくる めぐる 本の世界」である。読書が人間形成に欠かせないことはいうまでもないだろう。人間の知が生み出したのが本であれば、図書館は知の宝庫である。
知の宝庫である沖縄県立図書館八重山分館が2012年に廃止されてから2年が経過した。市民や文化団体、議会、八重山市町会、日本図書館協議会などが廃止に反対する中、石垣市の中山市長は県教育庁の廃止に同意し、他の町もそれにならった。
存続運動をしていた「存続を求める会」や議会への説明もなく行政間の密室における同意であった。「存続を求める会」は2012年3月27日、「分館廃止の経緯と八重山地域の図書館像を考える集会」を開催。出席した中山市長は「私には図書館問題に対するブレーンがいなかった」ことを認め、廃館後の書庫について「市立図書館の横に県立図書館の書庫を整備し、新たな分館をつくるようなイメージ」であると発言。
■進む蔵書の傷み
「存続を求める会」が提案した県立図書館の支援体制や、八重山広域圏における図書館行政のあり方などを検討する協議会設立に中山市長は「ぜひやりましょう」と確約した。しかし、協議会設置は規約や人選などを行政側の要望で旧求める会メンバーが提案したが、遅々として進まず、そのため、旧存続を求める会のメンバーは昨年2月に中山市長、玉津教育長などと面談。市長は本年度中に設置を明言した。
だが会議で規約等が検討され、全員で合意をみるが、市長、教育長、副市長らに教育部長や図書館長が報告すると反対され、差し戻しとなり再び検討するという堂々巡りに終始している。
しかも、準備会のメンバーには反対理由が十分になされていない。これではいつまでたっても協議会が設立されるわけがない。そのうえ、いまだに設立のための予算をどこが負担するか、協議会はどの部署が担当するかの内部調整もまったくなされていない。
■「すぐやる」が一向に進まず
中山市長は「すぐやる」をモットーとしている。協議会設立の〈たらいまわし〉の現状をどうみているのか。八重山広域圏代表として設置を市民に宣言した以上、積極的に指導力を発揮すべきではないか。廃止から2年余、分館の蔵書は傷みも進んでいるという。
去る9月1日、県教育庁生涯学習課から「県立図書館旧八重山分館蔵書の仮保管場所調査」依頼が八重山の関係機関に出された。それによれば分館廃止後、蔵書を地元で活用することを検討しているが、いまだ恒久的な保管場所が決まっていない。そこで石垣市内の県有施設を調査し、一時的な仮保管の可能性について調査をする。仮保管庫とするかは八重山3市町の意向確認後となる|としている。
中山市長が確約した石垣市立図書館横への保管庫設置や、八重山市町会が要望した「県立図書館八重山分館の蔵書の保管施設は沖縄県において設置し、新設をお願いしたい」という要望はどうなるのか。県教育庁が書庫や保管庫を造るという確約した文書はあるのか。なければどうするのか。
中山市長は協議会を早急に立ち上げ、世論をバックに県に対して意志を示すべきだ。このままでは指導力・判断力なし、何も決めきれない市長と呼ばれるであろう。