最近「八重山に移住したい」との声を耳にする。NHKの朝のドラマ「ちゅらさん」放映後の移住ブームでよく聞いた話▼リーマンショックで経済が冷え込んでからは、リストラされて郷里へ引き揚げる、もしくは竹富町の離島から石垣市へ移り住む、という話を聞かされた。それからすると、新空港開港後の活況が背景にあるかもしれない▼移住を相談された場合、段階的に様子を見るように勧めている。若い世代は行動が先行することも多いが、中高齢で思いが先走って、最終的に失敗するケースもある▼美しい自然景観に魅了され、定年後の「終の棲家」と決め、退職金をつぎ込んで住宅を建てる人がいる。中には市街地から離れた海沿いの美しい場所で夫婦の新しい生活をスタートする人も少なくない▼ところが石垣島は車社会だ。免許がないと、ものすごく不便な生活を強いられる。さらに移住者の中には老いを考えない傾向の人もいる。車の免許を持っている夫が亡くなり、不自由で島を離れる人もいた▼段階的な様子見の移住を勧めるのは、不便さを体験して冷静な判断をしてもらうためだ。若い人はともかく、中高齢者の移住地は農村地区より街中がいい。隣近所付き合いをしながら、地域共同体に入って老いてゆくことが移住成功のカギを握ることになる。(黒島安隆)
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