■3市町議員選の争点
来月7日投票の3市町議員選まで3週間を切り、予定候補者の動きが一段と慌ただしくなっている。3市町はそれぞれに大きな争点があるが、自衛隊配備の是非もその一つだ。防衛省が配備を明言している石垣市は、まだ正式な要請はないが、新たに選出される議員は4年の任期中に自衛隊配備の是非に判断を迫られる可能性は高い。
与那国町は既に配備に向けた工事が進んでいるが、今回の選挙結果で計画がさらに加速するのか、一定のブレーキが掛かるかが焦点。竹富町は直接配備計画はないが、郡内に配備されることで影響は否定できない。
これまで「災害救助」を前面に支持を得てきた自衛隊も、今回の集団的自衛権行使容認で戦地に派遣され、互いが互いを殺し合う“戦争する集団”に変容する。そういう軍備強化に郡民はどういう反応を示すか。安倍内閣は閣議決定後支持率が続落している。
■奄美はミサイルも配備
中国を念頭に2018年度までの中期防に南西諸島への自衛隊配備を盛り込んだ防衛省は去る5月、与那国の陸自沿岸監視部隊着手に続き、6月には武田良太副大臣が宮古島市を訪ねて下地敏彦市長に陸自警備部隊の配備を要請。
さらに今月12日には同副大臣が奄美大島の奄美市と瀬戸内町に同部隊の配備を要請した。地元と調整中と報じられる石垣市には中山市長によると「石垣市にはまだ話は来ていない」が、防衛省は15年度予算に調査費を要求するとしており、近く具体化は必至。
奄美では両市町に計約550人規模の陸自警備部隊を配備すると同時に、地対空・地対艦誘導弾(ミサイル)も配備する計画という。石垣も同様に配備の可能性は十分だ。
もしミサイルが配備されれば有事の際真っ先にミサイル攻撃を受ける可能性は否定できない。以前から「小さな観光の島に軍隊は似合わない」と指摘してきたが、そこに地対空・地対艦ミサイルまで配備されると尖閣をめぐる一触即発の日中関係の中で観光産業にはリスクとなり、八重山の産業経済は大きな打撃を受けかねない。
■軍事基地で風評被害
沖縄は基地があるため、01年9月の米同時テロで大きな打撃を受けた。「報復攻撃を受ける恐れがある」との風評被害で修学旅行を中心に観光客約24万人余がキャンセルし、観光収入は230億円も減となった。
それは基地のない八重山にも及び、市観光協会などは本土各地にキャラバン隊を派遣するなど懸命にキャンペーンを展開したが、NHKドラマの「ちゅらさん」効果で大幅増が見込まれた観光客は逆に2万人も減となり、観光産業のもろさをあらためて露呈した。
与那国もそうだが、軍隊はいったん配備されるとだんだん増強され肥大化する。元外務官僚の孫崎享氏は「日本は中国と軍事的に対決しても勝ち目はない」と離島への自衛隊配備の必然性を否定した。沖縄は現在でも国防を担い過ぎだが、さらにそういう必然性のない自衛隊を、新空港開港でようやくにぎわいを取り戻した「観光の島」があえて自ら大きなリスクを背負ってまで配備させる必要があるだろうか。