「1000万円」。この金額で読者は何を連想するだろうか。実は、自宅外から私立の四年制大学を卒業するまでに必要とされる総額だ▼年間の授業料にアパート代、光熱費、食費、帰省費などもろもろを合わせた金額だ。特に授業料は年間100万円近い額となり、年に前期と後期の2回、数十万単位を一括で請求されるため、工面が大変だ▼高校卒業後、数多くの子どもたちが島を離れ、本島や本土の大学や専門学校などに進学する。その裏で保護者は、4年間でその進学費用の捻出に追われることに▼県がまとめた2010年度の県民所得は平均202万5000円。八重山はそれを約5万円上回るが、全国で下位。この所得から考えると、子ども1人を大学に通わせる親の苦労が分かるだろう▼この現状の中で幅広く利用されているのが、民間の財団や学校、行政などが設けている奨学金制度。石垣市は、学業や経済面で一定の条件をクリアした者が島外の大学や短大、専門学校に進学する場合に月5万円の奨学金を無利子で貸し付けている▼卒業の1年後から月2万5000円ずつの返済となるが、中には滞る場合もあるとか。進学する子どもたちは、親の苦労、奨学金に報いるためにも、しっかりと勉強し、職に就き、自分の力で完済してほしいものだ。(下野宏一)
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