台風11号が近づいている。電柱をへし折り、車を吹き飛ばしたあの台風13号に似た猛烈な台風だ▼いまのところ、沖縄本島の東寄りコースを進む見通しだが、昔から言い伝わるソーロン(旧盆)台風であり、背筋を凍り付かせるほどの破壊力を生じる。それだけに厳重な警戒が必要▼台風常襲地の八重山住民は、台風に慣れている。進路情報に神経をとがらせ、早めに対策するのが一般的。前もって食料を買い込み、ビデオをレンタルするなどして家から出ない。頑丈な建物の中で台風通過を待つ▼八重山の街は台風被害を何度も繰り返し、強固な建物に建て替えられた。武骨で赤瓦屋根のような美しさはないが、巨大台風に襲われても、死者はめったに出ない▼台風だけを見ると、世界で最も優れた防災都市だろう。ところがライフラインはあまり変わらない。電柱が木製からコンクリート製になり、太さを変えたりしているが、電力もNTTも基本的には被害の復旧だけ▼電線類を地中に埋設すれば、停電や電話不通などのリスクは低減する。ただ、その共同溝システムは費用がかさむため、民間主導ではなかなか進まないが、防災面での必要性を訴える声は行政からもなかなか聞こえてこない。しかも議会でも電線類の地中埋設は、景観保全以外は取り上げられない。不思議だ。(黒島安隆)
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