■観光好調で人手不足
昨年3月に南の島石垣空港が開港して以降、好調な観光に支えられて八重山は有効求人倍率が好調に推移し、久しぶりに雇用環境が大幅に改善しているようだ。しかし一方でホテル業や飲食業などの観光業界では人手不足が深刻化し、時給の引き上げなどで対応しているが、それでも人手不足は解消出来ていないのが現状。そのため同業界は年中を通しての最繁忙期である8、9月のトップシーズンを前にさらに不安を募らせていると聞く。
今月初めに開かれた八重山雇用対策推進協議会(会長・我喜屋隆石垣市商工会会長)の総会では、これら観光業界の求人と求職のミスマッチが取り上げられ、賃上げなどの待遇改善で人手不足解消の指摘があったという。
確かに八重山観光は、今年も4月に初めて10万人台を記録するなど昨年の新空港開港以降18カ月連続で前年超えし、ますます勢いを増している。
■「雇用の質」改善で安定確保
この好調な観光に支えられて今年1~3月の新規求人は、観光関係の宿泊・飲料サービス業が407人で前年同期比171人増となったのをはじめ医療・福祉、卸・小売業、建設業、生活関連サービス・娯楽業、製造業とどの業種も軒並み増えている。その結果が観光業を中心とした人手不足だ。
求人が増え、雇用環境が大幅に改善されたのは大いに歓迎すべき喜ばしいことだが、問題はその求人の中身、雇用の質の問題だ。
沖縄は県全体でも観光の伸びで失業率は改善されてきた。しかしそれでも賃金の安い身分の不安定な非正規労働者が44.5%と全国トップで全体の約半分を占め、“雇用の質”の面では改善にほど遠いのが現状だ。
特に夫婦とも非正規という世帯も少なくなく、その結果沖縄は年収300万円未満の子育て世帯が27.8%と全国の4倍を占め、それが「子どもの貧困」「貧困の連鎖」となっている。
■誇りを持てる職場に
それは沖縄が景気動向や市場動向に左右される観光産業を中心にした不安定な産業構造にあるためだろう。観光業は非正規雇用の割合が高く、賃金や身分など待遇面で地元の若者たちから決して人気のある職場とは言い難い。
八重山職安の資料でも若者たちは事務系を望み、接客や営業のホテル、サービス業などを敬遠する傾向がある。そのため時給を上げても従業員を確保できないミスマッチが続いている。
しかし八重山が今後とも、「観光立市・立町」で現在の観光中心の産業構造で地域経済の活性化を図るとするなら、行政や業界は地域を挙げて企業や学校などでプロのホテルマンなどの人材育成を強化。事業所は非正規を正規社員にして賃金水準を引き上げるなど「雇用の質」を改善しない限り、地元の若者たちは今後も観光業への従事に積極的にならないだろう。
確かに雇用の質改善は零細業者が多い業界にとっては経営的に極めて厳しいことだ。しかしその努力なくして八重山の雇用や経済の安定はない。そこで八重山雇用対策推進協議会も、非正規など不安定な雇用改善のため、もっと積極的に提言があるべきだ。