石垣市内で旅行バス事業を展開する㈲カリー観光バス(本社・豊見城市、鹿川幸正代表取締役)が早ければ今月末にも、石垣港離島ターミナルと南ぬ島石垣空港を直接結ぶ路線バス事業に新規参入する計画を明らかにしている。だが、同離島ターミナルのバス停車場は他社の利用も多く、現在でも混雑が発生していることから管理者の市港湾課は「混雑問題の解消が最優先」として、新規参入の認可には時間はかかるとの見通しを示している。国の事業認可には、同ターミナルへのバス停設置が不可欠で、同社の参入が暗礁に乗り上げた現状だ。(砂川孫優記者)
■混雑問題
離島ターミナルのバス停留所は一度に5台の停車が可能だが、現在は工事のため停車スペースは3台分のみ。
この現状で、1日上下便54便の路線バスや船会社の送迎バス、観光バスなどが利用。時間帯によって他の車両が停車できないケースも発生しており、新規参入による過密さの増大が指摘されている。
玉城博文港湾課長は「新規参入会社のバス停設置は混雑問題の解消次第。バス停利用に関するヒアリングを各利用社に行い、部課内で検討する」と答えた。カリー観光バス石垣営業所の長浜寛所長代理は「離島ターミナルのバス停申請が許可されないと路線バス運行許可がおりない。市側に早期の許可を求めている。会社の経営にも影響するので(認可を)急いでほしい」と訴えた。
■業界は
東運輸によると、空港からのバス利用者は全体の約3割。1日約800人が空港と市街地を結ぶ路線を利用。同社担当者は「(競合で)利用客が減少するのは仕方ない。既存のバス会社としての強みを生かしたい」と話す。沖縄県ハイヤー・タクシー協会八重山支部の請盛真実支部長は「約500人がタクシー乗務員として勤務。路線バスの新規参入で売り上げだけではなく会社経営にも影響が出る。同じ公共交通機関として市側は配慮していない」と不満を示した。離島ターミナルで客待ちをするタクシー乗務員の男性(60)は「これを機に、他にも参入する企業が出れば、タクシーは必要ない。今の石垣市は新規参入の抜け穴だらけ」と訴えた。
■利便性は
カリー観光の運行ダイヤは南ぬ島石垣空港と離島ターミナル間を1日17往復の直行便運行を計画。区間に要する運行時間は約25~30分。
西表東部の民宿で働く60代の女性は「観光客から路線バスに荷物置き場がないことや、待ち時間が長いなどの不満を聞く。直行便での運行は大歓迎」と喜んだ。
竹富島の民宿従業員の20代男性は「空港が遠くなったことで時間に余裕がなく、移動が早いタクシーを利用。安くて早いのであればバスに替える」と期待した。
同社の鹿川代表は「直行便というのが最大の強み。利便性がよくなるよう、利用客のニーズに合わせた運行を行いたい」と強調した。