■自衛隊が海外で戦闘に加担
政府は1日、午前の自民、公明両党の合意を受けて同日午後臨時閣議を開き、憲法解釈を変更しての集団的自衛権行使容認を決定した。これにより従来の政府解釈が憲法9条を盾に禁じてきた自衛隊の海外での武力行使に道が開かれ、日本は憲法9条の下戦後69年間、一度も「戦争しない国」からいよいよ「戦争する国」に踏み出した。
閣議決定の2014年7月1日は、くしくも「専守防衛」を掲げた自衛隊の発足60周年に重なり、この日は日本の安保政策が180度転換した歴史的な日となった。同時に自公連立政権の安倍晋三首相、山口那津男公明代表も戦後初めて海外の武力行使に道を開いた政治家として、それが名誉なことか不名誉なことかはともかく後世に大きく名を残すことになった。
従来の政府解釈が禁じる集団的自衛権行使に対し、「戦争できる国」に前のめりな安倍首相は、尖閣諸島をめぐる中国の動きなどを巧みに利用。あたかも近隣諸国が今にも日本を攻め込むかも知れないという危機感や愛国心、国防意識を国民にあおることで、拙速と批判されながらも念願の行使容認を急ぎ閣議決定することに成功した。
■「平和の党」何処へ
その鍵を握ったのが連立を組む公明党だった。当初行使に反対だった同党も、連立政権に踏みとどまりたい足元を見られて安倍首相のペースに翻弄(ほんろう)されつつも、「踏まれても蹴られてもついてゆきます下駄(げた)の雪」批判にもめげず自民との連立を優先。党内の慎重論、反対論も押し切って容認に転じた。
山口代表は武力行使に関し「二重、三重の歯止めがかかった限定容認であり、拡大解釈の恐れはない」と強調したが、安倍首相や同代表がどんなに言葉を弄(ろう)して正当化しても、それがまやかしであり、「アリの一穴」歯止めは効かず、日本が戦争に巻き込まれる可能性は否定できない。
これでは再びの戦争に道を開いた自民と“共犯”と批判されてもやむを得ず、「平和の党」「弱者の党」の看板が泣くというものだ。それは戦争が国を壊滅的に破壊し、弱者をさらに苦境に追い込むからだ。今回の件で連立優先の公明党に対する信頼、イメージが大きく崩れてきているのは確かだ。
■首相官邸に憤りの声噴出
同問題では閣議決定前夜の30日、首相官邸前に歩道は身動きできないほど行使容認に反対する市民約1万人が集まり、「憲法破壊許すな」とシュプレヒコールで深夜まで首相の理不尽な横暴に憤りと抗議の声を上げたという。
20代~30代の若者たちの参加も多く「戦争になり、自衛隊に入る人がいなくなったら徴兵制になるのでは」と心配していたようだが、確かにこの問題は日本の若者たちの未来の問題であり、八重山にとっても地元出身の若い自衛隊員が戦場に駆り出され命を奪われかねない深刻な問題である。
公明も一緒に決議した30日の沖縄県議会をはじめ、全国の地方議会で慎重審議を求める決議が相次いでおり、今度は逆に安倍政権の行使容認の閣議決定を“骨抜き”にし、若者を戦争から守るため反対の輪を広げていきたい。