カブトガニをご存じだろうか。そう、あの数億年前から姿を変えることなく干潟に生き続ける奇妙な生き物だ。その青い血液に含まれる成分は医療現場や国際宇宙ステーションで欠かせない役目を果たしているが、近年、生息地の環境破壊で数が激減した▼生物多様性から受ける恩恵は計り知れない。一方で環境破壊や資源の過剰利用など人類発展の鍵を握る生態系を脅かすのも人間だ▼生物多様性は人間社会の発展に関わる多くの可能性を秘めている。地球全体の健全性は生物多様性の上に成り立っていると考えられており、その保全を進めていくことは持続的な社会の構築につながる▼沖縄の豊かな自然は内外から注目を集め、西表島は生物の多様性が認められて世界自然遺産に登録された。子どもたちが干潟でカニや魚を捕まえた時の笑顔は、なにものにも代えがたい▼1日、山形県では、ラムサール条約湿地近くで再エネ施設を計画する事業者へ鶴岡市が「重要な生態系があるため、慎重な判断が必要」と中止を求めた▼美しい地球には干潟から宇宙までと活躍の場を広げる興味深い生物がすむ。私たち大人の役目は足元にある自然を後世に残すことだ。生態系のホットスポットが多く存在する八重山。予防原則を無視しない政策決定が重要となる。(立松聖久)
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