講道館の創設者、「柔道の父」として知られる嘉納治五郎氏(1860年―1938年)には名言がある。同館ホームページは師範の言葉として真っ先に「精力善用」「自他共栄」を挙げる▼前者については「柔道の根本義は、精力の最善活用である。言い換えれば、善を目的として、精力を最有効に働かせることである」、後者には「つまらぬ抗争をやめて、自他共栄の原則により、あらゆる精力を最善に活用するようになれば、その結果、国家の実力は現在よりも数層倍にのぼるであろう」などと師範の言葉を紹介。そしてこう結ぶ▼「一切の教訓・主張を包含して、動すべからざる真理に本づいている精力善用・自他共栄の旗を掲げ、天下すべての人々と共に邁進していこうとするのが我らの主張である」▼この二つの言葉の嘉納直筆の書が、柔道家でもあるプーチン大統領の手元にあるのだという。「精力善用」は2017年に日ロ首脳会談で安倍晋三首相(当時)から、「自他共栄」はこれに先立つ2005年に柔道家の山下泰裕氏からそれぞれ贈られたそう▼そんなプーチン大統領が核戦力の使用をもちらつかせながらウクライナへの軍事侵攻を指揮し、多くの民を犠牲にしている。今こそ、柔道の父直筆の書の教えに触れてほしいと願わずにはおれない。(比嘉盛友)
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