【与那国】任期満了に伴う町長選は8日、投開票が行われ、野党が擁立した元町議会議長で新人の糸数健一氏(67)=無所属=が628票を獲得し、前議長の前西原武三氏(67)=自民公認、公明推薦=に122票の大差をつけ、2度目の挑戦で初当選を果たした。4期16年の現町政路線に終止符を打った。元町議の池間龍一氏(70)=無所属=は55票だった。投票率は前回の92・93%を1・9㌽下回る91・03%だった。(8面に関連)
今町長選は22年ぶりの三つどもえの争いとなったが、糸数氏と前西原氏による事実上の一騎打ち。外間守吉町長路線の継承か刷新かが問われた。
陸上自衛隊与那国駐屯地が配備されて5年目の選挙となり、革新側は前回選挙と同様に革新系候補の擁立を断念。保守との共闘で糸数氏を擁立した。
選挙戦で糸数氏は現町政運営を批判。「公平公正な行政運営」「排除の倫理はやめろ」などと訴えた。政策では与那国空港の滑走路延長・拡張、漁業資源の開発調査、役場の公平な行政サービスの徹底、ワーケーション推進に向けたICT通信のインフラ整備などを掲げ、支持拡大を図った。
今選挙は保守、革新ともに分裂したため票読みが難しい情勢となったが、革新と保守の町議5氏の支持を得た糸数氏は革新票の流出を最小限に抑えた上で“反外間”の保守票を取り込んだ。自衛隊票も多く獲得したとみられる。
一方、前西原氏は外間路線継承を訴え自公体制で臨んだが、保守票と自衛隊票が予想以上に糸数氏に流れる結果に。革新系の主張を展開した池間氏が、糸数氏の革新票を取り込めなかったことも間接的な敗因となった。
池間氏は陸自駐屯地の増強反対などを訴えたが、支持を広げられなかった。
糸数健一(いとかず・けんいち)氏。1953年8月18日生まれ。祖納出身。東京理科大学中退。06年から3期連続当選。3期目は議長。17年町長選出馬のため、同年に町議を辞職。