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重大な岐路に立つ八重山郡民

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■戦時中想起させる配備理由

 憲法改正、集団的自衛権を巡って日本が「戦争する国」へ大きく右にかじを切っているさなか、奄美大島、宮古島、石垣島に陸上自衛隊駐屯地を新設し配備する方針が18日明らかになった。それは昨年閣議決定した防衛大綱、2018年度までの中期防衛計画に盛り込まれた南西諸島への配備が具体化に向かうということだ。

 自衛隊の島しょ配備は「攻撃が想定される離島に相手より先に上陸して情報収集やその後の部隊の展開に備える」というのが理由。島しょに部隊を配置して、敵の情報収集や、支援部隊の到着に備えるためという。

 戦時中の「沿岸警備計画設定上ノ基準」や沖縄戦における「南西諸島守備大綱」、第32軍の水際作戦や持久作戦を想起させる。

 戦時中八重山に配備された旅団は最後の一兵まで戦えと叫んだ。米英軍が上陸し本格的な戦闘が行われたならば、八重山の住民はほとんどが戦渦に巻き込まれ死亡したであろう。1945年9月、上間貞俊大浜村長から八重山支庁への報告書によれば、「万が一終戦があと1カ月遅れていたら備蓄食料も皆無となり病魔と飢えによって全住民は死亡したであろう」と述べている。この言葉や戦争マラリアによる3600余人の〈死者〉のもつ意味はきわめて重いものである。

 

■3万4千人参加し離島奪還訓練

 昨年11月1日から18日まで、陸海空3自衛隊3万4000人が参加して、沖大東島で離島奪還訓練が行われ、去る22日には奄美大島沖の江仁屋離島で上陸訓練を行うなど尖閣諸島を想定した3自衛隊による演習を行っている。

 自衛隊によれば、南西諸島は地形上の特性から、防衛が困難であるため、敵の攻撃を受けた場合、いったん敵に離島を占領させた後、増援部隊が強襲上陸して敵を撃破し、奪還するという戦い方を採用したようだ。

 つまり、敵に占領されないため、増援部隊が来るまで戦い、それから奪還作戦が敢行されるという。では、戦闘が始まったとき、住民はどうなるか。

 外国の武力攻撃を受けた場合の有事に備えた国民保護法がある。沖縄県民が有事に巻き込まれた場合、国は本土への避難を計画している。沖縄県国民保護計画の「離島における武力攻撃事態等への対処」によれば、島内、島外、県外避難があり、島内避難は島のどこか。島外避難は八重山郡内。離島住民は石垣島かあるいは直接沖縄本島への避難。県外避難は、本島等を経由せず直接本土へ避難することになっている。

 石垣市の計画もほぼそれを踏襲している。戦前の「縣民指導措置八重山郡細部計画」である。敵の占領、自衛隊の島しょ作戦や離島奪還作戦が始まれば、住民は身を隠す場所などないはずだ。

 本土への県外避難となれば、輸送船舶や航空機を確保することができるであろうか。本島を経由せず直接本土へ行けというが、石垣から鹿児島までの距離は1000㌔余もある。ミサイルや砲弾が飛び交うなか安全であろうはずがない。戦争となれば、軍事基地が標的にされるのは常識であろう。港湾、空港が攻撃の対象となることはいうまでもない。

 

■住民を危険に陥れる自衛隊配備

 自衛隊配備は有事の際、国民の生命、身体、財産を守るというが、戦争になればそれらはすべて破壊の対象である。国民保護計画も机上の空論にすぎない。離島の住民がこの計画で保護されるというならば、それは奇跡というしかない。

 安倍首相は15日の集団的自衛権の記者会見で「国民の命を守る」を強調し、自衛権行使をしなければ、家族を助けられないなどと弁じた。しかし、暴力の応酬のなかで家族の生命財産を守ることができるであろうか。否であろう。八重山への自衛隊配備は、中国との緊張感をさらに高め、離島奪還作戦や離島上陸訓練などにみるように、住民の生命、財産を危険に陥れるだけである。

 八重山郡民は与那国島に続き石垣島へも自衛隊配備という重大な岐路に立たされている。戦争体験や歴史の教訓に学び、戦争を否定した石垣市平和都市宣言の精神に立つべきであろう。


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