オンラインで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第44回世界遺産委員会拡大会合で26日、日本政府が推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島」(鹿児島、沖縄)を世界自然遺産に登録することを正式決定した。島の成り立ちを反映した独自の生物進化を背景とし、国際的にも希少な固有種に代表される「生物多様性」の保全上重要な地域であることが評価された。国内の自然遺産は屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)に次ぐ5件目。
登録区域は、日本列島の南端部約1200㌔にわたり弧状に点在する琉球列島の一部。4島にまたがる登録地の面積は4万2698㌶(西表島2万822㌶、沖縄島北部7721㌶、奄美大島1万1640㌶、徳之島2515㌶)。その大部分が森林だ。
かつて4島はユーラシア大陸とつながっていたが、約1200万~200万年前の地殻変動や海面変化で切り離され島々を形成。閉ざされた島の環境下で生き延びたイリオモテヤマネコやヤンバルクイナ、アマミノクロウサギに代表される多くの動植物が希少な固有種として独特の進化を遂げてきた。現在、登録地には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの絶滅危惧種95種(うち75種は固有種)を含む陸生動植物が生息・生育している。
今回、世界遺産条約締結国から約40件の世界遺産リストが提出され、世界遺産委は沖縄・奄美の登録地について、諮問機関であるIUCNがまとめた「登録が適当」との勧告を踏まえ希少な固有種が多いという価値を認めた。一方、ユネスコは指摘事項として観光客の抑制策を要請したほか、希少種の交通事故を減らす取り組みを検証し、必要であれば強化することも求めている。
現在、日本で世界自然遺産に推薦されている他の地域はなく、沖縄・奄美が国内で最後の世界自然遺産登録になるとみられている。
4島の世界遺産登録を巡っては、政府が2018年夏の登録を目指し、17年2月にユネスコへ推薦書を提出。IUCNは18年5月、沖縄北部の米軍訓練場返還地が推薦地に含まれていないこと、推薦地の飛び地が多く生態系の保全に連続性を確保できないため同地の再考などを指摘し「登録延期」を勧告。政府は同返還地、西表島では北部・北西部の河川流域などを推薦地に追加して19年2月に再提出。ことし5月、IUCNから「登録勧告」を受けていた。