近年、テレビの女性アナウンサーが、ことにニュース番組のキャスターたちが連日のように衣装を取り換えて出演することが珍しくなくなったが、半世紀余前の中学校で女性教師が自前で数多いおしゃれな洋服を用意し着こなして教室に現れ、授業を進め辞去して行く光景があったことを、つい先日のことのように思い出した▼101歳で亡くなった伊良皆喜美先生がその方。言語明瞭でユーモアに富み時に寸鉄も飛び出す弁舌は、退屈になりがちな授業を待ち遠しい授業に変えた▼職員室の会議でも臆することなく男性教師にごして発言している様子も廊下越しに伺え、今をときめく男女参画、協働社会を先駆けで体現なさっていたのではと思い出す▼男子を褒めるのも上手で言いたいことは遠慮せず述べよなどのアドバイスは進学後も就職後にも、行き詰まると思い出され励みになったと同窓会で語る教え子も▼教師退職後のおしゃれもいよいよ色鮮やか派手になり地味な教え子たちを煙に巻いていた▼卒寿前にお会いする機会があったが「御免ね、最近時々、記憶が飛んで、名前を間違ったりするけど悪げはないからね。アッハッハ」。葬儀には教え子、同僚、後輩教師の多彩なマスク顔。街路では鮮やかなホウオウボクが見送った。(仲間清隆)
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