朝起きて「おはよう」とあいさつを交わす。朝食で「いただきます」の言葉があり、食べ終えると「ごちそうさま」と感謝する▼登校や出勤時には「行ってきます」とはずむ声が玄関口に響き、母親が「行ってらっしゃい。車には気をつけてよ」とやさしく送り出す。帰宅すると「ただいま」の子どもの元気な声を聞いて「おかえりなさい」と母親が安心した笑顔をみせる▼昭和の時代、ごく普通の家庭でみられた朝夕の光景である。さて、平成の時代はどうなのだろうか。核家族化が一段と進み、夫婦共働きの世帯があたり前のようになり、さまざまな家庭内で親と子の会話が少なく、ぎすぎすしているという懸念の声が聞かれるようになった▼このわびしさをなんとしよう。あいさつは先手なり、といわれるように人間関係をつくる第一歩。明るくて感じのよいあいさつは、相手の警戒心を解いて心を結びつける。人の言葉と心が一致してはじめて会話も生きる▼それでも人は時にかんしゃくを起こし、つい相手の心に突き刺さるきつい言葉を吐くこともある。すぐに後悔して後味の悪い思いをするものだが、それが取り返しのつかない結果を招いたりする▼あたり前のことができる人は魅力的である。家庭や社会でのひと言の重み、言葉のキャッチボールを大切にしたい。(鬚川修)
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