竹富町は、イリオモテヤマネコを交通事故から守ろうと「イリオモテヤマネコ交通事故対策条例」(仮称)の制定を予定している。政府が2020年の世界自然遺産登録を目指していることから、町は前年の19年度内の制定を目指す。今後、条例内容を話し合う委員会を設置し、具体的な事故対策など条例内容の検討を進める。ヤマネコが人への警戒を弱め、道路に飛び出して事故に巻き込まれるケースがあることから、ヤマネコと人との距離を適切に保つ方針を盛り込む考えだ。
近年の輪禍状況について西表自然保護官事務所の北浦賢次自然保護官は、観光客が団体型から個人型へシフトしていることに着目。「一概に事故件数増加への直接的な要因とはいいがたい」と前置きした上で「大型バスによる日帰り観光から個人パックによる宿泊型の観光客が増え、ツアー業者や飲食店の送迎やレンタカーの往来が増えている」と分析する。
一方、認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金西表島支部やまねこパトロールの高山雄介事務局長は、観光客らがヤマネコの生息域にむやみに入ったり、発見した個体に近づいたりしないよう、「観察方法のルール」づくりの必要性を訴える。
地域住民が生活の中でヤマネコと遭遇する機会はほとんどないが、入山を伴う自然観察ツアーなどで観光客が出くわすケースがあるからだ。このため高山事務局長は「発見時の対応や観察の方法をルールで定めてもらいたい」と話す。
山の中でヤマネコに餌付けがされているとのうわさもあることから、「ヤマネコに餌付けをすることで人間や道路、車を恐れなくなることも考えられる」と不安視。実際、特定の個体が何度も路上で目撃されており、「ヤマネコを取り巻く環境は確実に変化している」と警鐘を鳴らす。
同事務所によると、記録が残る1978年以降、ヤマネコの交通事故は86件発生。このうち80件で死んでいるのを確認。2008年からの直近10年の事故は40件に上り、事故総数の半数を占める。ことしの交通事故件数が過去最悪の7件(事故死5件、生死不明2件)に並んだことを受け、11月27日には非常事態宣言も発表された。