夏日が終わりを迎える頃だ。涼風が心地よく島々に秋が訪れる。その秋の異称に「白秋」がある。「青春」から「朱夏」へ、「白秋」から「玄冬」へ。人生に例えれば秋は50代後半から60代だろうか。遠い昭和に比べ、平成末のこの年代は「朱夏」の残り香を漂わせて若い▼「生涯現役社会」という。定年で退いたシニアも70歳まで働いて、と国が号令をかける。狙いは労働力確保と社会保障費の抑制。はっきり言えば、シニアが働くと国は年金も健康保険も支払わなくてもすむ▼身をもって体験した。やっともらえるようになった年金が勤めに出て減額された。なけなしの年金、である。この国はせこい▼「女性が輝く社会」も「1億総活躍」も人手不足対策だ。なぜか上から目線、外国人労働者受け入れ拡大のための入国管理法改正もしかり▼「働く意欲」に応える社会保障の制度設計がない。子育て中の女性は働きたくても保育園と保育士が足りない。シニアが勤めれば国の給付費は減るけれど、外国人労働者が増えて給付増。あちこちでほころびがでる▼まさに「白秋」世代である。さりながら人生に定年はない。生涯現役を目指す人も後進を育む者も、畑に汗水流す者も孫守りも、人生いろいろでいいじゃないか。人の生き方、国があれこれ口をはさむな。(慶田盛伸)
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