【与那国】約1カ月にわたり議長選挙を繰り返していた与那国町議会(定数10)は10月31日、99回目の議長選で与党の前西原武三氏(64)が10票を獲得、全会一致で議長に選出された。9月28日の開会から始まった議長選は23日目でついに決着を迎え、議会が正常化した。
議長選に使用した投票用紙は990枚に上った。就任あいさつで前西原氏は「これ以上の議長選は混乱を招きかねない。苦渋の選択で議長を引き受ける」と述べた。議会はこの日、会期を11月7日までと決定。議長選の影響で会期が過去最長の41日間となる。
町議会は午前10時の開会から議長選に入り、事前に与党側から与党議長の選出について申し合わせを受けていた野党側も前西原氏の名前を記入。全会一致で第20代議長が誕生した。副議長は指名推選で野党の崎元俊男氏に決まった。
前日の30日に与党側は、外間守吉町長と金城信浩副町長を交えて協議を続けていたが、要望していた教育長人事の専決処分が難しいことから、町長の説得に応じる形で野党に交換条件を出さない「無条件」で議長職を受け入れた。
議長選終了後、前西原氏は「与党内部には議長の2年交代を考える議員はいるが、(議長選を)100回を前にここで区切りをつけようと一致した。すっきりした気持ちではないが、町民が納得する議会運営をしたい」と語った。
野党の田里千代基氏は「まずは町民におわびしたい。今後は各議員が町民のために責任を果たしてほしい。野党側は議長を出さずに我慢する支持者との約束を果たせた」と振り返った。
この日の議長選を傍聴していた50代の男性は「町民として歯がゆさと恥ずかしい思いがあった。ようやく決まってホッとしたが、今後は公平公正な議会であってほしい」と期待した。
住民運動も視野に入れていた70代男性は「決まらなかったら首謀者の町長の解職請求に踏み切る考えだった。(与党は)苦渋の決断ではなく、与党から議長選出は慣例だ」と指摘した。
ようやく決まった議長に外間町長は「行政側が議会を詮索するものではないが、異常事態を打開したかった。議会には是々非々で品位と品格を取り戻してほしい」と話し、引き続き少数与党を強いられることには「改選前のような状態にはならない」と見据えた。
町総務課によると、開会からこの日までに島内外から寄せられた抗議は50件に上り、「早く議長を決めろ」、「税金の無駄遣い」などがあった。