【那覇】翁長雄志知事の逝去にともない30日に投開票される県知事選に立候補している無所属新人の佐喜真淳(54)=自民、公明、維新、希望推薦=とオール沖縄勢力が推す玉城デニー(58)の両氏(届け出順)に選挙の主な争点や八重山関連の政策などを聞いた。翁長県政への評価や米軍普天間基地の名護市辺野古への移設で意見が分かれた。質問は次の通り。①八重山・宮古への自衛隊配備計画について②離島振興策への取り組み③尖閣諸島問題について④翁長県政の評価⑤選挙の主な争点ーの5項目。
■佐喜真淳氏
離島振興ーキビ価格増額目指す
①八重山・宮古への自衛隊配備計画について
県民の生命と暮らしを守り抜くため、離島地域にも一定の防衛力の配備は必要だ。
ただし、部隊の配備にあたっては、地元の理解を十分に得たうえで進めていくことが欠かせない。
②離島振興策への取り組み
離島でも安心して子育てや豊かな暮らしができるよう本島と比べて割高な生活費を軽減する。
さらに、緊急搬送体制の充実や専門医の巡回診察、診療所の診療体制の充実などで医療体制を強化する。
中学生が本島の高校に自由に進学できるよう第2第3の離島学生寮を整備し、定住人口維持のために空き家利活用対策の充実や公営住宅の整備を進める。
農業ではサトウキビの増産や製糖工場の整備、さらに生産者価格の増額を目指す。
③尖閣諸島問題について
領海警備は、一義的には海上保安庁の所管だ。しかしながら、尖閣諸島は沖縄県の一部であり、その領海が脅かされる行為には、県もしっかりと抗議の意思を示すなど断固たる態度で臨むべきだと考える。
その一方で、中国側との偶発的な衝突を避けるため、常に連絡や交渉のチャンネルを維持し、決して事態がエスカレートすることのないよう関係機関に働きかけていくことが必要だと考える。
④翁長県政の評価
お亡くなりになった翁長知事が、沖縄の過重な基地負担を全国に知らしめたことは高く評価する。
一方で、この4年間で国との関係において争いが絶えなかったことは事実ではないだろうか。これは沖縄の県民性を考えれば、決して望むものではないはずだ。
また、MICEの着工が止まったままとなり、那覇軍港の移設先をめぐる那覇市や浦添市との協議も前に進んでいない。さらに沖縄振興予算は4年間で500億円も減った。
⑤選挙の主な争点
県民の暮らしをいかに豊かにするかが争点。一人当たりの県民所得、子どもの貧困率、若者の非正規雇用率、いずれをとっても沖縄県は全国最下位だ。
県民所得300万円を実現し、子どもの保育、給食費、医療費の無償化で子育て世代を強力にバックアップする。
さらに嘉手納飛行場より南の米軍基地の返還を確実に実現し、その跡地利用をダイナミックに進めることで沖縄経済のいっそうの発展を実現する。
■玉城デニー氏
離島振興ー交通コスト軽減推進
①八重山・宮古への自衛隊配備計画について
住民合意もなく地域に分断を持ち込むような自衛隊配備強行は認められない。地元に十分な説明を尽くすことは国の最低限の責務だ。沖縄県民は先の大戦で筆舌に尽くしがたい悲惨な地上戦を体験し、多くの県民の命が奪われた。自衛隊は専守防衛に徹するべきだ。
②離島振興策への取り組み
県の農林水産物流通条件不利性解消事業は高く評価されており、事業の維持に向けて取り組む。
離島の子どもの派遣費助成を実施。待機児童ゼロの実現、保育料の無料化、保育士の待遇改善、子ども貧困対策の着実な実施、窓口負担のない通院費無料化、給付型奨学金の拡充に取り組む。
急患空輸体制、医師不足など医療サービス対策や離島の患者・妊産婦等の通院費を低減する離島患者等支援事業を推進する。
国立自然史博物館の誘致、天然ガス資源の有効活用に向けた支援、旧石垣空港跡地の利用促進、電線類の地中化の推進、交通コスト負担軽減事業の推進、生活コスト低減、離島航空・船舶運賃を引き下げるための割引運賃制度や空港着陸料等の減免に取り組む。産業廃棄物処理対策を推進する。
③尖閣諸島問題について
尖閣諸島は、戦後秩序と国際法の体系の中で日本の領土として扱われてきており、領有権をめぐる問題は外交と国際法により解決が図られる必要がある。
④翁長県政の評価
高く評価する。翁長知事は、建白書の実現を県政の柱に位置づけ、国の圧力に屈せず、辺野古新基地建設を阻止するために全力を尽くしてきた。
アジア経済の活力を取り込む経済政策で大きく発展させてきている。好調な沖縄経済の下で、完全失業率も改善、有効求人倍率も復帰後初の1%台を達成した。農業生産出荷額の伸び率も全国一となった。
子どもの貧困対策でも、全国に先駆けて実態調査を行い、子どもたちを取り巻く困難さを具体的に把握でき、官民挙げての取り組みが格段に広がった。
⑤選挙の主な争点
今回の選挙は、辺野古新基地建設を認めるか認めないか。県民の英知を結集してつくった21世紀ビジョンに基づいて、基地に依存せず、自然を守り、沖縄のソフトパワーの上に経済発展していくのか、それとも基地を認め、国の振興策に頼って経済発展をしていくのか。沖縄のアイデンティティーが問われる選挙だ。