いしがき少年少女合唱団(砂川富貴子指揮者)の団員や保護者、OBら約25人が来年3月下旬から4月上旬にかけてスイスを訪問し、石垣中学校1年の増田健琉(たける)君(12)が小学3年の時に沖縄全戦没者追悼式で朗読した平和の詩「空はつながっている」の楽曲を中心に数曲を現地の教会などで歌う演奏旅行を計画している。同合唱団が海外で同楽曲を歌うのは初めて。約3年前の増田君の詩が石垣島とスイスをつなぎ、平和と交流の輪を広げている。
詩は、同じ空の下で世界には戦争をしている国があり、どうすれば平和になるのかを考える内容。優しい気持ちや平和の心を持つことで世界はつながり合い、分かり合うことができると訴える。
楽曲は、スイスと日本で活動するバイオリニストの河村典子さん(64)が詩に感銘を受け、スイスの音楽仲間、ワルター・ギーガーさんに依頼して制作された。2016年10月に同合唱団の定期演奏会で河村さんと夫でコントラバス奏者の白土文雄さん(67)、ウクライナ人ピアニストのアレーナ・チェルニーさんの演奏で団員が歌い、初お披露目された経緯がある。
砂川さんはその後、交流に向けて17年3月と同11月にスイスを訪問し、河村さんらとともに準備を進めてきた。「空はつながっている」のほかにわらべ歌や日本の代表曲、三線演奏を交えた沖縄の歌の合唱、アカペラなどを予定しており、「日々の練習の中で細かい計画を立てていきたい」と話す。現地でのホームステイも計画している。
河村さんによると、東日本大震災で被災した東北の子どもたちを励まそうとスイスの中学校音楽教師が作曲した「未来の友だち」という曲を、団員と現地の子どもたちが一緒に歌う交流なども考えているという。
1日には、河村さんと白土さんらが来島して増田君の自宅を訪ね、定演以来の再会を喜び合った。
健琉君は「世界で歌われることはないと思っていた。詩がいろんな所でつながって、さまざまな国で聞いてもらえるのはうれしい。この縁を大切にいろんな人とつながっていきたい」と笑顔。母親の乃どかさん(43)は「いろんな人が平和に対する思いを乗せて歌ったり、演奏したりしていて、ただの詩であった時とは大きく変わってきている。私たち家族にはなかった世界が広がったのは大きな喜び」と語った。
河村さんは「なぜ石垣島なのか。縁というしかないが、健琉君の詩が原点にある。団員の皆さんには“空はつながっている”ことを身をもって感じてもらえたら」、白土さんは「詩があって曲ができ、いろんなことが付加され、そこには言葉で言い表せないものがある。それが音楽。(団員には)一生懸命自分のできることを頑張ってもらいたい」と話した。