■相次ぐ頭越しの決定
石垣市の要請を受け、県が整備する不発弾保管施設の建設問題がこじれている。市と県が事前に周辺住民らにきちんと説明することなく、昨年2012月初め、頭越しに建設場所を屋良部崎の市有地に決めたため、同地区の崎枝公民館(新里武夫館長)が反発しているためだ。同地区住民は急きょ開かれた説明会や公開質問状の回答に納得しておらず、強行すれば事態が混乱するのは必至の状況だ。
石垣市では12年10月、クルーズ船乗客の利便を考慮して市が無料シャトルバスを運行することになったが、それが事前にタクシー業界の了解を得ずに頭越しに決めたため、運行当日タクシー乗務員約70人が市役所に押しかけ、抗議する騒ぎとなった。
これは中山市長が即刻、運行中止を決定し混乱は収まった。ところがそれから約4カ月後の13年2月、今度は火葬場の建設候補地を周辺住民の了解を得ずに決めたため、周辺のバラビ道住民が反発、候補地を白紙に戻し仕切り直しする騒ぎとなった。
■火葬場の教訓も生かされず
そのさい同じように地元住民の頭越し決定で混乱に陥り昨年3月、34年の長い曲折を経てようやく開港した新石垣空港建設の教訓が生かされていないと批判された。それが新空港どころかわずか約10カ月前の火葬場建設の教訓も生かされず、今回の事態となった。
役所というところは担当部署が違えば、誤りは共有されないところなのだろうか。このところ3市町では、議会で当局側の相次ぐミスや不適切行為に対する謝罪が目立つ。議員の厳しい追及もあるが職員のたがが緩み、マンネリ化した職務遂行になっているのだろう。役所全体でミスの共有が必要であり、3市町ともあらためて管理職を含めた職員研修が必要だ。
無料シャトルバスのように利害関係のある事業に関しては、当然事前に利害関係者の了解が必要。火葬場も市民に必要な施設だが、自分のところに造ってほしくないいわゆる“迷惑施設”の一種だ。それだけになおさら事前に周辺住民の理解を得る努力が必要。
■保管庫も仕切り直しを
それが担当部署らの「そこなら大丈夫だろう」の思い込みによる“不作為の過失”でこうした手続きを怠ったため、結局は仕切り直しであらためて新石垣空港方式を参考に設置した選定委員会で場所を選定。当初予定より約1年遅れで事業がスタート、その分市民に迷惑をかけることになった。
不発弾保管庫も一種の“迷惑施設”だが、「現在も不発弾を保管している場所であり、そこは大丈夫だろう」の同様の思い込みで、最も肝心な周辺住民の事前了解を得る手続きを怠ったため、事業が停滞することとなった。
火葬場建設問題同様、市と県は多少時間はかかっても崎枝住民の不信を払拭(ふっしょく)するため、仕切り直しで住民の理解を得る努力が必要だ。
そしてこれは石垣市だけでなくすべてにいえるが、役所はやるべきことに消極的対応の不作為に対しても厳然と担当職員らの責任を追及し、教訓を教訓として生かす対応が求められる。