先日、第40回琉球新報活動賞の贈呈式があり、6団体・5個人の中で出版文化活動の高文研(飯塚直代社長・本社東京)の受賞に注目した。多くの沖縄関連本を手掛け、苦悩する沖縄を全国に発信している出版社だからだ▼同社は「沖縄」とタイトルが付く本だけでもこれまでに約90冊出版しているようだが、そのきっかけが1983年出版の「観光コースでない沖縄」という▼観光でにぎわう一方で、沖縄戦の傷跡を引きずり、今の辺野古問題にみられる日米両政府の理不尽な米軍基地押し付けに苦しむ沖縄の表と裏、光と影、戦跡と基地を知ってもらおうと当時沖大教授の新崎盛 氏を中心に9人の新聞記者や研究者らでつくったのがこの本だ▼書店から「恐らく売れない」といわれたこの本が、本土からの修学旅行のガイド本的役割で意外にもヒット。現在4版まで改訂を重ねている▼以来同社は次々と沖縄本を手がけ、今では「本土での沖縄理解の心強い応援団」だ。とはいえ現状は沖縄がどんなに悲痛な叫びを上げても大多数の日本国民は、基地負担を嫌がり沈黙だ▼八重山からは故友寄英正氏と大田静男氏が参加しているが、同書で友寄氏が「棄民」と称した血と涙の開拓地も、ミサイル基地にされるか否かの分岐点にある。成否は市長選の結果次第だ。(上地義男)
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