八重山農林高校(山城聡校長、生徒274人)グリーンライフ科バイオコースの2、3年生26人がこのほど、人工の培地にキノコの菌を植え付ける菌床栽培で、培地づくりから収穫までの一貫生産に八重山で初めて成功した。ことし7月から本格的に作業を進め、12月上旬の農業祭でシイタケ約10㌔を販売したところ、開始早々に売り切れるなど大好評だった。培地に使う材料の確保が難しいという課題もあるが、同コースでは今後も研究を続け、栽培するキノコの種類を増やしていきたい考えだ。
■滅菌器も手作り
同科は2014年度の学科改編後、植物バイオテクノロジーの教材としてキノコ栽培を取り入れ、研究を進めてきた。培地を無菌状態にするため、内部を高圧力にすることができる装置「オートクレーブ」3台を使用、生徒たちがドラム缶で滅菌器を製作し培地を多くつくれるよう工夫した。培地はキノコの栄養源となるイタジイなどを使ったおが粉が必要だが、八重山では手に入らないため本島北部から取り寄せた。
夏休みを利用し、おが粉176㌔と栄養分となるふすま(麦ぬか)19㌔、水294㍑を混ぜて滅菌した後、1個当たり2・5㌔の培地を計196個製作。8月中旬に105個にシイタケの菌、10月中旬に62個にウスヒラタケの菌を植え付け、それぞれ90日間、40日間培養して発生させた。
8月30日から3日間、中学生を対象に行った体験入学では、2年生の指導で中学生もシイタケの植菌作業を行った。
■「周年収穫も可能」
八重山農林水産振興センターによると、郡内のシイタケ生産では、山から切り出した原木に植菌してキノコを生やす原木栽培が1984年から行われていたが、92年以降は途絶えている。91年から92年までクロアワビタケの菌床栽培も行われていたが、台湾から培地を取り寄せたものだった。
同センター農林水産整備課農林整備班の古波蔵みな子班長は「菌床栽培は八重山の森林資源の新たな活用方法になる。培地をつくれる技術があれば、周年で収穫できる可能性も出てくるので、ぜひ続けてほしい」と期待。
一方、おが粉の確保が難しいことについて「体制が整っていないのが現状。八重山で作れる環境を整えていければ」と話す。
■成功に手応え
同コース3年の東與那覇明寛君(18)は「手探りの状態だったが、成功できた。今後も種類を増やして販売し、八重農産のキノコを市民に食べてもらいたい。菌床栽培が石垣に根付いたらうれしい」、体験入学で中学生に指導した2年の仲間怜央(れおう)君(17)は「来年も体験入学があった場合にしっかり教えられるよう技術をしっかり身に付けたい。改良できる部分はほかの人たちと協力してやっていきたい」と語った。
同コースを指導する登川智子教諭(37)は「野外での生産も含めてキノコ栽培の流れを確立していけたら。地中のシロアリの巣の中に菌床をつくって生育するとされているオオシロアリタケの栽培にも挑戦していきたい」と話した。