海を隔て遠く離れているがゆえ電波が届かない島々に、テレビがやってきて今月で半世紀になる。八重山手帳に教えられた。受像機がある家は少なく隣近所の子らが集まり、動かないテストパターンから見た。ひざまずきして▼「ひょっこりひょうたん島」に夢中になった。連続ドラマは「旅路」。その音楽は今も耳に残る。ニュースは夕方なのに「おはようございます」と言った▼全国同時放送は9年後の昭和51年。海底ケーブル敷設でようやくカラーテレビになった。かの具志堅用高さんが世界チャンプに輝いた年だが、NHKは試合中継放送がなく地元ファンは親子ラジオにかじりついて聞いた▼民放テレビ放送開始は平成5年。半世紀のうち26年間はNHKのみの暮らし。この間、ケーブルテレビやビデオショップが庶民の娯楽を補った▼ラジオも難聴地域。全国でも珍しいFM波に乗せた民放2波の放送開始は平成16年。天皇皇后両陛下行幸啓の年である▼BSにCS、選択肢は増えた。スマホやPCでラジオが聞けるラジコのサービスが始まった。来年には4K、8K放送も始まる。半世紀で情報伝達の手段や機器はかくも発達した。一国の大統領がSNSで悪態をつぶやき、ネット社会に匿名の闇が広がる時代。島にいて世界とつながる。ホンモノを見極める目を、耳を持たねば。(慶田盛伸)
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