与那国町は1日、町制施行70周年の節目を迎え、きょう式典と祝賀会を開く。お祝いムードに水を差すようで恐縮だが、やはり気になる。住民間に残る対立感情のしこりが▼外間守吉町長は、人口流出傾向に歯止めがかからない状況を受け、陸上自衛隊の配備誘致を進めた。結果、2016年3月に沿岸監視隊が配備された。これをめぐって地域は賛成、反対に割れ、分断された▼そしてことし8月の町長選。革新側は「自衛隊票が加わったので、革新はもう勝てる見込みがない」として擁立を断念。保守では「一部だけに片寄った政治をしている」「一部が自己利益の追求に走っている」と内部でくすぶっていた不満が表面化、分裂選挙となった▼これを受け、陸自を推進してきた側の与那国防衛協会も、2人の会長がそれぞれ正当性を主張して真っ二つ。協会が二つ存在するという異例の事態となっている▼陸自配備に伴い、1500人を切っていた人口は1700人台に戻った。しかし、根本的な問題である人口流出傾向に歯止めがかかったわけではない▼70周年の節目は、町民が一致団結して飛躍を誓い、島の発展にまい進する決意を新たにする機会となるはずだが、住民感情のもつれをほどくのは容易ではない。陸自配備は、こうした代償も残しているのである。(比嘉盛友)
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