読書の秋。大学時代に記者という職業に関心を持つきっかけの一つとなった「戦場の村」(本多勝一著、朝日文庫)を、めくってみた。ベトナム戦争を描いたもので、タイトルこそ刺激的だが、書き出しはこうだ▼「あと十数分で、二月九日(一九六七年)の午前零時を迎えようとしていた。サイゴンのほぼ中心部にあるキャラベル=ホテルの屋上にあがると、夜の市街を一望に見渡すことができた。すべてのベトナム人にとって、今夜は年に1度の最大のお祭りー旧正月(テト)を迎える大みそかの夜である」▼この後、旧正月休戦に入っているサイゴン(現ホーチミン)のお祝いムードを伝えながら民衆の中に入っていく▼6部構成のうち1部から4部までは「サイゴンの市民」「山地の人々」「デルタの農民」「中部の漁民」。普通の民家に住み込み、ベトナム人の暮らしぶりをつぶさに取材し、日常の悲喜こもごもをつづる▼読み進めていくうちに、ベトナム人が身近な存在に。そして第5部「戦場の村」、第6部「解放戦線」と続く。そんな人たちが悲惨な目に遭う姿に怒り、悲しみ、そしてベトナムの解放を求める姿に希望を見いだしていく▼そんなところに感銘を受けたのだと思う。何よりも日常こそ守らなければならない優先事項なのだと。(比嘉盛友)
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