もう20年ほどになるだろうか。八重山ファンという大学院生と知り合った。原子力を専攻しており、難しい話にはついて行けなかったが、有効性や安全にはかなりの自信をみせていた▼卒業後、その青年は東京電力に入社し、のちに同じ八重山リピーターの女性と結婚したと聞いた。その後連絡は途絶えたが、福島原発のニュース中継や記者会見のときには、現場にいないかと彼を探している▼あの凄惨(せいさん)な東日本大震災から、きょう11日で3年。被災県の復興は課題が山積、多くの人々が震災前とはまったく違う生活をしている。特に福島第1原発近くの人々は、断腸の思いで故郷を離れた。その中には石垣島で暮らすようになった人々も▼驚くのは同原発の汚染水漏れやメルトダウンなど、深刻な状況が次々と明らかになるなかで原発輸出に向けて動きだしていることだ。それを世界はどう見ているのだろうか▼私たちが住む八重山も、原発の不安を拭えない。隣の台湾、中国で多くの原発が稼働中だ。ひとたび事故が起きれば大変だ。風向きによってはすぐに被害を受けかねない▼原発の安全神話が崩壊したいま、多くの国民が新たなエネルギー政策への転換を望んでいる。日本の高い技術力でこの問題を克服、世界の手本とすることが大震災の教訓ではないか。(黒島安隆)
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