「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」「一ねんせいになったら」など、子どもも大人もよく知っていて歌える童謡の作者、詩人のまど・みちおさんが亡くなった。やさしい言葉でつづられた詩歌は、リズミカルで覚えやすく幼児でも最後まで歌える▼比べて文部省唱歌や校歌はどうだろう。まず言葉が難しい。おなじみの兔追いしで始まる唱歌ふるさとも習ったころは意味も分からず、ただ復唱していただけなので身につかず、いまだもって歌詞カードがなければおぼつかない。「こいのぼり」の甍(いらか)の波以下の歌詞、他の唱歌も同じ▼これは作詞者のせいではない。世間がそんな麗句を好み望んだのではないか。校歌も同様で、たいていの人は一番の頭出しがせいぜいである。まどさんなら、きっと一度覚えたら死ぬまで忘れない楽しい校歌を作ってくださったかも▼くしくも、わが母校の校歌の作詞は、まどさんと台湾時代に親交のあった石垣島の詩人・喜友名(石島)英文さん。過日上演された三木健さんの音楽劇「潮がれ浜」でそのことを知って、まどさんをより身近な存在に感じた▼まどさんは、人間に限らず生きものの命は、何ものにも優先して守られなくてはならないとの信念から戦争には反対で、解釈で国の平穏を揺るがしかねない内閣の動きを憂慮していた。(仲間清隆)
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