明後日は「慰霊の日」。昨年のできごとを覚えておいでの方も多いだろう。摩文仁・平和祈念公園での全戦没者追悼式典。参列した安倍総理に「戦争屋、帰れ!」とヤジが飛んだ▼夕方、NHK全国ニュースを見てがくぜんとした。総理への罵声は完全に消去され、ヤジの事実も伝えられなかった。8月6日の広島平和記念式典でも同じことがあったという。平和への祈りの場で一国の総理に罵声が浴びせられる現実。ありのまま伝えてこそ報道の使命▼集団的自衛権の容認や安保法制を「数の力」で強権的に進める総理への、沖縄と広島の激しい怒りと抗議の意思表明。NHKの忖度(そんたく)は、総理批判をなかったことにした。事実を歪曲する行為だ▼6月は鎮魂の月。基地問題を主な争点とした県議選が終わり、次は参院選。私たちはいつまで基地のくびきから逃れられないのか。喧噪のなかでも、それぞれがそれぞれの場で平和や戦争について静かに思いをはせる月。記憶を風化させてはならない▼「慰霊の日」に改めて思う。強大な軍事基地があっても平和をつくれず、基地あるが故に住民の暮らしに安心安全がないことは、戦後沖縄のありようが示している。未来永劫この島々が平和で自然豊かに、穏やかに暮らすためにはどうすればいいか、考える一日にしたい。(慶田盛伸)
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