「きれいな海があるのにいいんじゃない」。南の島の星まつりを始めたころ、冷ややかな見方があった。今ではどうだろう。ツアーが行われるなど、星空が観光資源になっている▼きっかけは、国立天文台が2001年に、旧暦七夕に明かりを消して天の川を見ようと全国に呼び掛けたキャンペーン。マスコミの受けは良かったが、応じる自治体は皆無だった▼ちょうどそのころ、宮地竹史さん(67)=石垣島天文台所長=がVERA石垣島観測局・電波望遠鏡の建設のため石垣島に出向していた。宮地さんは02年、VERAの完成に合わせ、石垣市にキャンペーンを打診。調整を経て初の星まつりの開催にこぎ着けた▼八重山の星空は国内で唯一、南十字星の一番下のアルファ星まで見える。多良間島ではぎりぎり、宮古島では水平線の下。八重山には地理的優位性があった▼星空には癒やし効果があるようで、これを求めてやってくる観光客も多い。筆者も疲れたときなど、アパートのベランダから星空を見上げることがあるが、目に光が入らないよう両手で遮らなければならない▼宮地さんは「星空を取り戻すことは人間性を取り戻すことになる」と力説する。8月6日から始まる星まつりは15周年の節目。あらためて「光害」について考える機会になればと思う。(比嘉盛友)
↧