ピンピンコロリを近年の介護頼み長寿社会の理想の逝き方として憧れる人は多い▼しかしピンピン過ぎて病院にもかからず、万が一の時でも救急車は無用などと平素から言明していた人が、ある日突然ぽっくり家で亡くなってしまうと、家族が傍らで大往生をみとったにせよ法律上は不審死で扱われ、火葬に必要な医師の死亡診断書がすんなりもらえないことは案外知られていない▼とどのつまりは、死亡診断書をもらうために警察の監察医の世話にならなくてはならない。遺体が警察へ移送されるだけでなく家族は最後のみとり状況のみならず、痛くもない腹を探られるような保険加入の有無などを事細かく事情聴取されても、ただただ恐縮して答えなくてはならない▼監察医の見立てによっては解剖されることもあるが同意しますかとも聞かれる。解剖になった場合は、引き渡しが一両日遅れることになるが、ご容赦いただきたいとも説明される。遺族は葬儀の予定も立てられず途方に暮れるしかない▼その点病院だと家族が駆けつける前に亡くなっていても、カルテに基づき医師は、即、死亡診断してくれる。家でなく病院で最期を迎える人が増えたのはそのせいかしらん▼カルテの有無が時代の求めとあらばやはり人間は無病息災よりも一病息災がいいのかな。(仲間清隆)
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