日本の政治はよく「本音」と「建前」、「虚像」「実像」がはっきりし、これが難事の際にうまく使い分けられているといわれる▼石垣島への陸上自衛隊配備計画で、配備先候補地に隣接する開南地区の住民有志が求めた説明会後に、防衛省側がとった対応はまさにその感を強くした▼取材した記者によると、防衛省の担当者らは「われわれはスポークスマンではないので」と取材に応じず、足早に車両に乗り込んで立ち去ったという。基地の受け入れを求められている地元の感情からすれば、問答無用ばりの対応には割り切れないものが残る▼陸自の配備計画は、市民が生活権を含めて一番心配している問題である。住民側が何を懸念し、防衛省側はどのような説明を行ったのか。説明会が非公開だっただけに、スポークスマンでないにしても「概要を詳細に説明し、協力を求めました」とか、それなりの対応があってもよかったのではないか。足早に去るとは、“臭い物に蓋をする”映画のワンシーンにもみえる行為である▼そもそも説明会を堂々と公開にしてほしかった。私たちは、過去2度の大戦の教訓として戦争は秘密から始まるということを学んだ▼ましてや極東最大の米軍基地を持つ県民は、戦争につながるものには敏感である。防衛省の今後の対応に注目したい。(鬚川修)
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