八重山らしいブルーの海と空の写真を表紙にあしらった出来たての小冊子をいただいた▼詩人の砂川哲雄さん手作りの個人誌「とぅもーる(海)」創刊号だ。ご自身の詩4篇や数多くの資料を基に研究を続けてきたという28㌻にわたる八重山歌謡論「鷲ぬ鳥ユンタ」論などがつづられている▼表現すること、書くことの緊張感を持続したいという砂川さん。以前に発刊していた個人誌「環礁」以来13年ぶりだという。パソコン入力から印刷、装丁まで全工程を自身でやっているというからすごい。「隔月刊で10号まで続けられたらと思っている」と控えめなのが砂川さんらしい▼八重山の文芸活動は、敗戦直後から1950年初めの文芸復興期「八重山ルネサンス」と呼ばれた頃が最も盛んで、その後も衰退や空白期を繰り返しながら多数の雑誌が創刊されてきたが、25年間続いた唯一の同人誌「邂逅」が2012年に終刊して以降、文芸誌は途絶えている▼砂川さんは「日本も沖縄も八重山も厳しい情勢の危険な曲がり角に差しかかっているように思える。こんなときだからこそ将来を担う20代、30代の表現者の登場が待たれる」と期待を込める▼確かに文芸や美術などの分野でも若い人たちが少ないように思える。この個人誌が若い書き手の刺激になってほしいと願うばかり。(辻本順子)
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