■一年を振り返る
年の瀬も押し詰まり間もなく2013年が終わろうとしている。この一年の八重山地域の多彩で個性豊かな手作り文化の歩みを手短に振り返ってみよう。
何よりも、長年にわたって八重山の人々の悲願であった新石垣空港の開港によって、入域者や物流の飛躍的な増大が図られ、八重山の美しい自然景観に加えて気品に満ちた八重山文化に魅せられ、全国から多くの人々がやってきている。新石垣空港の開港は海、山、空の自然美に加えて、個性豊かな八重山文化を全国に発信する絶好の機会となった。
本年も例年と同様に、数多くの伝統的な祭事に加えて、新しいイベントが開催され、八重山文化の多彩さ、底深さを印象づけた。ハーリー、ソーロン、プィーリィ、結願祭、種子取祭など伝統的な行祭事が、粛々と進められたかたわら、規模は大きくなくても、地域の特性を生かしたさまざまな芸能文化の取り組みが芽吹いていることは注目に値するだろう。
■13回目のドゥナンスンカニ
まず、2月24日に行われた「ドゥナンスンカニ大会」は、「与那国を代表するドゥナンスンカニを正しく継承・発展させ、与那国町の活性化と文化の向上に資する」ことを目的に開催され、今回で13回を数える。
「船浮音祭り」は、船浮出身のシンガー・ソングライター池田卓氏の企画・プロデュースで1995(平成7)年から西表島の船浮で開催され、今年4月21日に第7回を迎えた。船浮へは、陸路がないため、白浜から定期船で渡るので陸の孤島ともいわれる。日ごろ、プロのミュージシャンの演奏に接する機会の少ない人々に一流の演奏を楽しんでほしい、との願いを込めて池田氏が企画したイベントである。
5月3日に鳩間コミュニティーセンター前広場で開催された第16回「鳩間島音楽祭」には、人口70人足らずの小さな島に、およそ1500人の人々が参加して大いに盛り上がった。もともと島の音楽家・加治工勇氏が、97年に自宅の庭先で始めた音楽祭であったというが、近年では遠く県外からも駆けつけるほどの人気イベントに育っており、加治工氏をはじめ、関係者のご努力に敬意を表したい。
島の手作り「砂浜芸能祭」もユニークだ。「何もない砂浜が最高の音楽舞台に。夕日と波音、星空に包まれて、唄って踊ってもーあしびー」というキャッチコピーのとおり、西表島干立の浜で開催されてきた芸能祭は、8月25日と26日に開催された。
石垣市川平で行われている第5回「満慶まつり」は、16世紀ごろの川平の豪族であった仲間満慶山英極にちなみ、川平棒術や子どもたちの演舞等によって人々の交流を図り、地域を活性化することを目的に開催された。
■小浜島に地域文化賞
サントリー文化財団から第35回地域文化賞として表彰された小浜島の「うふだぎ会」と「小浜島ばあちゃん合唱団」の活動も特筆に値する。入団資格が80歳以上の女性たちによる合唱団として、島の古謡などを歌い継ぐ元気あふれる活動が高く評価されて今回の快挙となった。
これら文化活動は、規模は大きくなくても、豊かな自然環境に恵まれた私たちの八重山で、先達が営々と築いてきた素晴らしい文化を受け継ぐとともに、地域の個性、特性を生かした新たな息吹としての取り組みであり、八重山文化の底辺の広さと底力を感じる。