最近あまり見かけなくなったが、以前は自転車の前後いっぱい空き缶を積んだお年寄りが、街を走っていた。早朝のごみ出し時間帯の光景だ▼これが今月1日から禁止となった。各家庭が出す資源物のアルミ缶などを持ち去る行為が、市条例に抵触するわけだが、何か寂しい。市内のお年寄りの多くが、少ない年金で暮らしているからだ▼農業などで収入のある人はまだしも、年金が唯一の収入源だと生活は苦しい。借家なら、民間アパートを借りると家賃だけで精いっぱい。公営団地は「公平」として抽選を余儀なくされる。他地区から移り住む人々と同じ土俵に立たされるのもおかしい▼さらに冠婚葬祭を大事にする地域だ。お年寄りの負担は重い。このため、少しでも家計の足しにしようとアルミ缶を集めている。集めた缶を業者に販売して3000円を得るためには、350㍉㍑缶で実に2500本も必要だという。大変な労働▼一方で市は、アルミ缶を収集するお年寄りたちに対し、有償の清掃員に応募するよう働きかけていくという。有償の美化活動でその分をカバーするシステムだ▼ただ、お年寄りをめぐる問題は深刻な状況にある。核家族化が進み、さまざまな面で社会から取り残されている人が増えている。地域で、この問題を真剣に考えなければならないときである。(黒島安隆)
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