八重山研究や芸術文化の振興に顕著な業績を挙げた個人を表彰する第30回八重山毎日文化賞(八重山毎日新聞社主催)の選考委員会(石垣博孝委員長)がこのほど開かれ、正賞には八重山古典民謡の普及発展に尽力してきた南風野喜作氏(83)=石垣市川平=と、小浜島の歴史や芸能文化の研究を続け、文化活動の中心的役割を担ってきた黒島精耕氏(77)=石垣市新栄町=、特別賞に長年竹富町の織り手を育成し、工芸としての織物をこなしている内盛スミ氏(88)=竹富=が選ばれた。
第30回八重山毎日文化賞の贈呈式と祝賀会は22日午前11時からANAインターコンチネンタル石垣リゾートで開かれる。
【正 賞】南風野喜作氏〜古典民謡の普及に尽力
「知らせを聞いてびっくりした。私で良いのかなという気持ち。これまで川平の行事に携わってこられたことが一番うれしい」と胸の内を語る。
1931年、石垣市川平生まれ。55年、24歳の時に叔父の南風野英三氏、73年に大濵安伴氏に師事し、八重山古典民謡保存会の結成に参画。78年には川平研究所を開き、後進の指導に尽力している。
2003年から4年間、同保存会の会長。現在は最高顧問。八重山古典民謡コンクールの審査委員を22年、八重山古典民謡保存会師範・教師免許審査委員を13年、とぅばらーま大会の審査委員を14年務めた。1999年には沖縄県指定無形文化財「八重山古典民謡保持者」として認定され、2003年には市政功労者表彰も受けた。
川平公民館の神事部顧問を7年間務めた経験もあり、地元の行事に深く関わる。「川平は若者が少ないが、学ぶ意欲を持ち、行事に参加する人がもっと増えてほしい」と願っている。
後進の育成には「教師6人に自分の思いは託してある。後世につないでいってほしい。自分も体の続く限り指導に当たりたい」と意欲を語った。
【正 賞】黒島精耕氏〜「ダートゥーダー」探究で評価
著書「小浜島の歴史と文化」「ダートゥーダー探訪の旅−小浜島民俗歌舞の源流をたどる−」をはじめ、小浜島に関する論考を発表。竹富町史の編集にも尽力してきた。「ダートゥーダーに関する記録はほとんどなく、自分の生まれ島の文化のことを知りたいという気持ちで調べ始めた」と振り返る。
「ダートゥーダー」は、来年の豊穣(ほうじょう)を祈願する小浜島の結願祭で披露される民俗歌舞。黒島さんの若いころは文献などはほとんどなく、島独特の歌舞にどのような意味があるのか知ろうと、25歳から調べ始めた。以来50年以上にわたって研究を続けてきた。
今回の受賞に「50年かけて調べてきたことが評価されて感激している。ダートゥーダーはとても奥深いもの。いろんな解釈がある。私の執筆した論文が後輩たちが研究する際の一助になってくれれば」と喜ぶ。
1937年小浜島生まれ。八重山高校を卒業後、56年に教職員として小浜小中学校に勤務。98年に退職後、第5代町教育長。町古謡編集委員や石垣市文化協会事務局長も歴任。「小浜島の芸能」の国指定無形民俗文化財実現も尽力した。
【特別賞】内盛スミ氏〜多彩な織り、自在にこなす
「母の姿を見て、見よう見まねで織っていた。日々の仕事のつもりでやってきたことで、こんな賞をいただけるとは」と喜ぶ。
1925年、竹富島生まれ。旧姓・東里。ミンサーやあい染め、草木染、芭蕉(ばしょう)つむぎの技術講習も受け、88年に竹富町織物協同組合を設立。2002年まで理事長。沖縄開発庁(当時)沖縄総合事務局長表彰や通商産業大臣表彰、瑞寶単光章も受けている。
数え切れないほどの織物を織ってきたが「嫁いですぐのころ、何もなかったので木綿の漁網を家族総出でほぐした。その木綿を横糸に、絹を縦糸に織り込んだタオルや着物はお父さん(夫・正玄さん)にも褒めてもらって1番思い出に残っている」と目を細めた。
「織物が好きで好きで、明かりを消さないといけない夜が1番嫌だった」と振り返る。現在は手を痛めて織物を休業中だが「孫やひ孫と一緒に毎日楽しく、仲良く暮らしていくのが最高の幸せ。今は1日1日が一生の宝物」と笑顔をみせた。