子どものころ、よく軽石を拾いに行った。海岸に行けば難なく見つけられた。ススで真っ黒になった鍋や飯ごうの汚れを落とすのに軽石は最適▼しかし本土復帰後、軽石をほとんど使うことがなくなった。炊飯器の普及や優れた洗剤が手に入るようになったためだ。ただ、軽石はいまでも石垣島周辺海域、特に西海岸地区で容易に見つかる▼近くに海底火山がある証だが、住民には意外と知られていない。この火山は「西表島北北東海底火山」と呼ばれ、その名の通り西表島から約45㌔離れた北緯24度34分、東経123度56分、水深200㍍の位置にある▼1924(大正13)年10月31日に噴火し、このとき多量の軽石が黒潮にのって、全国各地の海岸に漂着したという。当然、石垣島沿岸や西表島にも大量に流れ着いた▼西表の北北東海域は地震が頻発しているところで、91年と、2000~01年には西表島で群発地震が起き、震源地とみられたものの、火山噴火を示す海面色の変化は確認されなかった▼海底火山の観測や研究はまだ十分でなく、いつ噴火するかも分からない。陸地でないのが幸いだが、場合によっては魚群移動ほか環境への影響も懸念されるところで、気象庁や海上保安庁の本格的な調査を望みたい。(黒島安隆)
↧