記憶は定かでないが、昨年の七夕だったと思う。30余年来の友人から電話があった。「出張で石垣市に来ている」という。居酒屋で再会を約束したが、心から喜べない▼というのは、彼が家庭内暴力や性的被害、育児放棄に遭っている子どもたちを保護、支援しているその道のプロだからだ。管理職のため、めったに離島出張はしない▼その本人からの連絡である。壮絶な生活を過ごしていた子どもたちの心をケアし、毎年、社会への巣立ちを見守っている「お父さん」だ。約束通りオヤジ２人で酒を酌み交わしたが、仕事の話は一切しない▼むかし非行少年の問題を取材中、衝撃を受けた。ある場所で焼き魚の食べかけを見つけた。子どもが食料を調達し、飢えをしのいだものと想像した▼彼は言葉を失うあらゆる光景を目撃、トラウマになった子どもたちを優しく包んでいる。出張の理由を聞きたいが彼は絶対に話さない。察するのは、市内に厳しい家庭があったということだけ▼なかなか表に出ない青少年問題がある。隣近所のプライバシーがなかった時代は、地域の人が非行を見かけたときには本気で怒った。だが先日行われた社明運動、青少年の非行防止大会には考えさせられた。会場の空席が目立った。参加者に、今後の青少年健全育成への不安を広げただろう。（黒島安隆）
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