【台湾】八重山と縁のある花蓮市や宜蘭県蘇澳鎮を含む台湾島の「後山地区」(東部エリア)と与那国島との間で直行の船舶航路の開設を目指す与那国島直航大連盟が3日、台湾で発足した。与那国島と花蓮市の姉妹都市交流はことしで40周年の節目。同連盟では「与那国島は地理的に台湾と近い。航路ができれば、交流を促進することができる」と強調している。
同連盟は東部エリアの宜蘭県、花蓮県、台東県を網羅する形で6人の共同発起人が組織した。花蓮市の魏嘉賢市長と魏木村元市長、蘇澳鎮の林棋山元鎮長のほか、地元選出の立法委員(国会議員に相当)らが名を連ねている。
与那国島との間で航路を開設する港としては、蘇澳港と花蓮港を想定している。
同連盟では、沖縄本島や石垣島は、台湾からクルーズ船で訪れる人気ポイントとなっているにもかかわらず、台湾からわずかしか離れていない与那国島は台湾との間を直接結ぶ航路がないと指摘。台湾側では、台湾島の東部エリアと沖縄との間で観光交流をめざす「太平洋左岸経済圏」を推進したことがあるものの、コスト面で折り合わなかったという。
あらためて与那国島と台湾東部を結ぶ海上航路の可能性を探ったところ、観光分野のほかに、生活物資や農産物を台湾側から直接与那国島に輸出することにより、コスト削減が図られるという。これにより、ウイン・ウインの関係が構築でき、「国境と国境を合わせることで、新たなコアを創造することができる」としている。
同連盟の発足を公表する記者会見は3日午前、台北市内で開かれ、林元鎮長は、八重山を訪れる日本国内の観光客を台湾に導き入れるなど観光や経済での協力を強調。魏元市長は、台湾側から与那国町に対する医療支援などに取り組みたい意向を示した。
沖縄側からは、与那国町の担当者や大城肇琉球大学前学長らがオンラインで参加した。
■糸数町長、歓迎の姿勢 運航具体化作業が課題に
【台湾】直航大連盟の会見では、台東市長や台東地区選出の立法委員(国会議員に相当)を務めた賴坤成氏はこれまでの調査の結果として「蘇澳港や花蓮港では、税関・入管・植防(CIQ)の対応は可能だと確認した」と述べ、積極姿勢を示した。与那国町側が将来的な海外旅行解禁を見据え、運航の具体化に向けた作業をどこまで詰められるかが課題となる。
直航大連盟の発足に際して、糸数健一町長はメッセージを寄せ、両町市が双方の政府に働きかけて「私たちの願いがかなうように力を合わせて黒潮経済共同圏確立を目指していきましょう」と呼び掛けた。
町は2019年度、高速船で花蓮との間を直接結ぶ高速船活用国境交流事業をスタートさせたが、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴って海外との往来が大幅に縮小した影響で足踏み。運航に必要な船舶を確保する見通しも立っていない。
町によると、直航大連盟は、同事業とは直接関係せずに発足した。ただ、「日本政府に対して(与那国側の)開港を働きかけているが、なかなか良い回答が得られない」(糸数町長のメッセージ)状況にあって、台湾側で動きが活発化することを歓迎している。台湾側で確保した船舶を与那国島との間で航行させたほうが計画の具体化が早まるとの観測もある。(松田良孝台湾通信員)