八重山や宮古に深い関心を寄せ、昨年8月に亡くなった民俗学者の谷川健一さんをしのぼうと島で親交のあった人々が集い「谷川先生と渚で語る会」が開かれた▼谷川さんと30年余交流し人脈の輪を広げた砂川哲雄さん、多方面から恩恵を受け励まされたという大田静男さんらを中心に、ありきたりの追悼会だと満足しないだろうと、縁のあった有志に呼びかけ思い出を交えながらそれぞれが研究発表を行った▼壮大な構想力と独創性あふれる思想で「谷川民俗学」と呼ばれる独自の研究を打ち立て民俗、地名、短歌、神と幅広い分野から先島に与えた影響は大きく、数多くの八重山関係の著作を残されている▼八重山地名研究会の結成や、歌人としても沖縄の海を詠んだ歌が多く、主宰する同人誌『青』『海の宮』の同人には影響を受けた八重山の歌人も数人いる▼谷川さんには取材でお会いしたことがあるが「なんと大きな方だろう」と見上げたのを思い出す。でもあれだけ立派な体格ながら結核で病弱だったと聞き驚いた▼谷川さんの「英雄や天才ではなく、名もなき人々、小さき者たちの哀歓に深い共鳴を抱くのが民俗学」というフレーズが心に残る。白保の海が好きだったという谷川さん。八重山の谷川ファンにエールを送りながら今も海を見つめているのかも知れない。(辻本順子)
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